第50話 第1の試験

 場所間違えたか?まあいいか。

 俺は次の会場が何処なのか分から無かったのでひたすら魔力を辿って来たのだが……?

 いつの間にか校舎の方に来ていたようだ。

 しかしこの学院、微妙に外と中の境界が分かりにくすぎるな。


 カルロンはそう言いながら辺りを散策する。もちろんいくつか調べたい事もあったのでいいのだがしかし。


「──ふむ?……ほぉ?……これは魔術?──雑な魔術による隠蔽がかけられている……なんの為にだ?」


 学院の隅っこ、そこにカルロンは妙に懐かしい感覚を察知したのでそれを眺める。すると魔術による何かを隠すための痕跡が見つかったのだ。


「ひっ?!……か、カルロン様っ!これって……!」


「─────これは……成程通りで懐かしさを覚えてしまった訳だね……」


 それを見たシェファロは悲痛な叫びを漏らす。無論この様子はあえては語るまい。

 ただ俺は屍とかした生徒たちのそれに手を合わせると、魔法による痕跡の調査を開始する。


「成程、そうか……こいつは驚く程に趣味の悪い奴がいるものだな」


 死体は既に死後硬直が始まっており、さらにその殺され方は心臓だけを貫かれると言う凄惨なものだった。心臓は無理やりネジ開けられたあとがあり、おそらくだがかなり鋭い槍かなにかによるものだと推測できる。


 だが妙なのだ。この死体は幸せな顔をしている点が酷く不可解なのである。

 可能性があるとすれば悪魔とか、魔物の類によるものか。


「ん?アナウンスがあったか……まあいい……この亡骸から得られる情報は得た。……済まないな『無に帰すムニキス』……安らかに眠れ」


 離れたところでアナウンスが流れる。その声を聴きながらカルロンは急いでそちらに向かうのであった。




 ◇◇◇



 ──第1の試験──


「皆様お待たせしました、それでは第1の試験、開幕でございます!……まずはこの石像を見てください!」


 試験監督の女性が示したのはオリハルコンで作り出された石像だった。

 よく見ると反魔法アンチマジックと魔術抵抗、物理カットなどの魔法特性が付与されていた。


「皆様にはこれを破壊……はできなくとも一定までのダメージを与えることをやって頂きます!……こちらは物理魔法どちらにも耐性を有しているので皆様の力で破壊することはありません……どうぞ全力で殴ってくださいな!」


「な、魔法も物理も?!……でもどれぐらいか知らねぇけど……この俺様の魔法なら余裕だぜ!」


 周囲はそんなバカ……はあんまりいなかった。むしろ皆冷静にどの魔法を使うか、どんなスキルで殴るかを吟味しているようだった。


「(なるほど、流石にこの学院に挑むもの達……年齢は千差万別だがそれなりに場数を踏んでいるものが多いのだろうな)」


「───では最初の方!どうぞ!」


 通行証が光る。それは何と俺だった。


「えっと最初の方、お名前は……キエス=カルロン……キエス?!」


「キエス……へぇ?」「キエスの嫡男……ハズレと呼ばれた奴がアイツか」「あの伝説のカルロンさん?!」「そうか……彼は今年14歳……そうか……」


 あれ?思ってたより驚きよりも納得の感じが多くないか。

 成程、他人にあまり左右されない奴らが多いのか。いい事ではあるか。


 俺は指示された場所に立つ。無論武器は鉄の剣だ。


「それでは……あれ?カルロンさん、魔法を使わないんですか?……あ、良いんですね……では初めっ!」


 視線が集まる中、カルロンはゆっくりと石像の中心に向けて剣を構え───。


 柄を


 それはエルドラドで教えられた戦闘術の一つ、それを教えてくれた『武神竜公ザナーク』曰く──。


初撃泰平ファーストピース』と言うらしい。ちなみにザナークは女性の竜だし、なんならそれを教えてくれた時恥ずかしそうにしていたので少しだけ怖かったんだけどね。


 空を割くほどの青色の閃光が放たれる。剣が本来していい色では無いそれが、突き刺さる。


 銅像はそれに対抗しようとした、しかし──それが抵抗することは出来なかった。

 破壊の一撃、その一撃で全てが無に帰すほどの超越的な一撃。

 かつてザナークはこれを使いひとつの国を滅ぼしたとされている。


 そんな技を受けて、銅像は簡単に破壊される。

 だがそれを見て他の冒険者たちや、受験者は驚くでもなく──。


「すごい技だ、だがあの火力であのダメージを出せるのならば俺の魔法ならばここまで行けるか」「ダメだな参考に出来ん、次の人のやつを見て調整するか」「火力はこれだけあればいいのか?」


 さすがだ。──天下一の魔法学院に来るもの達、特に年齢を重ねたもの達は即座に対策を始めていた。


「──カルロン様、合格でございます……では次の試験会場である『迷宮』の方に先に行っていて貰えますか?」


「迷宮、か。──にしてもかなりみんなアッサリしているのだな」


「いちいちこの程度に驚いていては学院のスタッフなど出来ませんよ……しかし流石はキエスの人……あれだけ破壊出来るものはそう多くはありません……では次の方」


 スタッフ、か。こいつ少なくとも魔法使いの中でもかなりのものを有しているな?

 スタッフなどと言う言葉はこの世界には無い。


 つまりこいつの近くには『異世界人』がいる可能性もあるな。

 異世界人、そうか。俺以外に異世界人が来ている可能性を考えると魔法もスキルもさらにシンプル且つ異世界人に気が付かれにくい魔法を使うべきかもしれないな。








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