第一章 冒険者編/復興〜(12歳)
第24話 三相神の力
カルロンがベルゼビュート・スライムと戦いを始める数刻前の事───。
場所は世界樹の上、つまるところ『魔法王朝セレスト=マギア』その心臓部。
そこに円卓に八人の純魔が座って会議をしていた。
彼らは八つの属性を司る当主
『火』は『フラム=イフリータス』……烈火のごとく凄まじい魔力を誇る赤と黒色の髪をした若き男。
『水』は『ミナモ・ウォーティア』……美しく、清らかなる水のごとき魔力を携えた青髪の女性。
『風』は『ウィンディ・ロードゲイル』……激しく、時にそよ風を誘う風来なる魔力を持つ緑髪と黒髪の混じる髭の似合う男。
『土』は『グラウス=ロックハート』……固く、そしておおらかな魔力を有する茶髪の頑強な男。
『光』は『フラッシュベル・アルバスノア』……煌びやかで、この世全ての光に愛されるほどの魔力を披露する金髪のイケメン。
『闇』は『アビサス=ダークリンド』……深淵にも等しい暗黒の魔力を秘めた黒髪の陰鬱な男。
『時』は『クロノ=タイムズディガー』……ただひたすらに冷酷かつ無慈悲な魔力。時など彼の手の中にあるというべきレベルの魔力を纏う白髪と黒髪の入り交じった男。
『空間』は『キエス=コキュルト』……我らがカルロンの父親にして、慈悲などない残酷な男。
彼ら彼女らは世界を支配する魔法使いの頂点たちである。
そんな大物たちの会議、さぞ卓越した会話が繰り広げられているであろう……空間に突如伝令が入る。
「皆様報告いたします!──冒険者区域にて七罪の魔獣が合計五体確認された模様です!」
その焦りようから、伝令がどれだけ必死にこれを伝えようとしてきたのかは容易に想像出来る。
当然伝令は期待していた。と言うか、この状況において手を貸さないわけが無いと思っていたのだが。
八人の純魔は少しも迷うことなく、答えを揃えた。
「「「「「「「「放っておけ」」」」」」」」。
「────えっ?」
「では次の会議内容についてだが……最近台頭してきている無属性の魔法についてだ、それの意見を聞こう──フラム家」
「あ〜たしかに聞くぜ?何でもユニーク魔法とか言うらしいな?……所詮ただの平民風情の見栄っ張りだと思ってるが?……アンタはどう考えてる?ミナモ家?」
「ええ確かに聞きます、ですが所詮は愚民の僅かひと握りのみが手に入れた力程度で我々の地位は脅かす事など不可能です、──ですよね?ウィンディ家」
「んまぁその通りだろ?実際俺んとこの奴と無属性の野郎が戦ったらしいが……ハッキリ言うと雑魚すぎてな……ククク笑いが止まらなかったぜ?──おう何だ?ジジイ」
「ジジイと呼ぶな、ウィンディ!ワシにもグラウスと言う家名があるというのに!……良いか我らが知らぬ魔法という可能性があるだけでも危機感を持つべきだと思わんか?……少なくともこの百年近くの間はこんなことなどなかったのだぞ?」
「おやおや、君たちは何を心配しているのだ?余に言わせれば……ちっぽけすぎる光など、握りつぶしてしまえばよかろう?……弾圧を強めればこんな粗末な話など消え失せるに決まっておろう?違うか──?」
「それではいずれ民に反逆されるぞ?フラッシュベル?……我が思うに、これはある意味新しい風であると思うのだが……この風はより高くに飛ばして様子みすべきでは無いのか?」
「アビサス、貴様は少し希望的観測を持ちすぎだ。私たちの知らない魔法、無属性。……これは世界の秒針を無理やり動かしてくるだろう──止められぬよ、我らではな」
「クロノ、冷静なお前が言うのだから間違いはないだろう……実際無属性はいずれ我らの前に立ちはだかるだろうな……その時は新たな無属性の帰属を作って縛りつければ良いと思うが」
八人は既に七罪による冒険者たちの被害などどうでもよかった。
何故ならば彼らにとって冒険者とは『ドブネズミ』以下のゴミ屑、ガラクタ、廃品……水面下で滅ぼされようがどうでもいいからだ。
◇◇
やがて会議も大詰めに差しかかる時、再び先程の伝令が入ってきた。
「報告いたします!七罪、全部討伐されました!」
しかしそれを聞いた八人は、「まあ弱い七罪だったのだろう……冒険者程度で倒せるとはな」ぐらいで終わっている。
──もし、冒険者達が倒せなければ、魔法使い達は皆死んでいたというのに、それには気が付かなかったようだ。
◇◇◇
───時は流れて、カルロンの視点。
目を開けると女が横に座っていた。シェファロでは無い?誰だろうか?
「じゃじゃーん!私です!ヘカテーですよ!」
ああ、思い出した。ベルゼビュート・スライムとかいう絶望の塊に負けかけた俺を助けてくれた変な神様だっけ?
見た目は白、黒、青、赤の髪色のメッシュの入った灰色の髪。
眼は金色と灰色、髪型はボブに近い。
アホ毛が少しピコピコしていて無性に引っこ抜きたくなるが、それは我慢する。
短い髪を片目にかけている姿で、とてつもなく薄手の服を羽織っていた。身長は今の俺では圧倒的に勝てないサイズ。
口には蛇の牙のような八重歯がちらちらと見える。
「どうですか?ふふーん可愛かろう?崇めたくなったでしょう?もっと敬っても良いんですよ!私神様!ですから!」
「────リコール出来ないですか?」
俺は返品しようとする。え?何かすっごいムカッと来たんだよね、驚いたよ。
「嫌です!フッフッフ……私の初めて……ではないですけど、唇奪ったんですから諦めてくださいね!って訳でさっそく……で す が !!貴方に武器をプレゼント致しちゃいます!いやー感謝してくださいね!あ、もちろんお礼はたーっぷり用意してくださいね?」
なんだろう、すっごい押し付けがましい。
「──はい!コチラ『
「
俺は目の前のソレを眺める。見た目はたしかに杖なんだけど……何か掴む場所がついているんだけど?
長さは1メートル前後だけど、今の俺にとっては少々長い。
その杖のグリップに手が触れた瞬間、目の前に謎のウィンドウが表示される。
『──登録完了、モード選択可能【
「─?多機能過ぎない?……」
するとヘカテーはめっちゃドヤ顔で。
「そりゃそうですよ!なんたって私はヘカテー……三相一体の女神ッ!……私は【天空】【地上】【冥界】を支配する力の持ち主ですので!武器ぐらい多機能なのは当然です!」
「なるほど」
「あ、ちなみに貴方に授けてる『祝福』も三つありますよ?─?【
「なるほどあらかた理解した、ではさっさとあと片付けを終わらせるために力を使わせてもらうぞ───」
「は、早くない?!……ま、まあいいけど……」
俺はさっそく【天空】の力を試してみる。頭に浮かび上がった星空のイメージ、広大なる天空のイメージが流れ込んでくる。
「『
なんでソレを放とうと思ったのかは分からないが、その魔法を唱えた瞬間。
夜と夜の闇がぶった切られて一瞬、太陽が見えた。
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