本編

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健太は霧に包まれた古びた道後温泉の入り口に立っていました。


彼の息は白く、霧の中で小さな雲を作っていました。


隣には、いつものように冗談を言って笑わせようとする直樹と、少し不安そうに周りを見渡している美咲がいました。



「本当にこの先に行くの……?」


美咲が小さな声で尋ねました。


その小さな声は霧に吸い込まれ、周囲の静けさに溶けていきました。



直樹は大胆不敵に笑いました。


「怖気づいてるの?大丈夫だって!健太が全部調べてくれてるから!」



「ほら、二人とも行くぞ!」


健太は頷き、友人たちを先導する。



彼らが歩き出すと、足元の石畳は湿って滑りやすく、古びた街灯がぼんやりと道を照らしています。


道後温泉の温泉街は、まるで別世界に来たかのようでした。




「ここは本当にタイムスリップしたみたいね」


美咲が感嘆の声を上げます。



「だろう?」


健太は微笑みました。


「でも、もっと不思議なのが待ってるんだ。」




彼らは、伝説の井戸があるとされる神社の方向に向かって歩き続けました。


周囲はどんどん静かになり、霧はさらに濃くなっていきます。


突然、美咲が立ち止まり、霧の中を指さしました。


「あれ、見える?なんか光ってる...」


彼女の声は震えています。



直樹は目を細めて光の方を見ると、赤黒い鳥居のようなものが見えました。


「ああ、神社だ。ついに見つけたぞ!」




しかし、健太は背筋に一気に寒気が走ります。


彼らが伝説を追い求めるうちに、何かが彼らを見つめているような感覚があったからです。


霧の中から、彼らに向かって何かがささやいているようでした。




「大丈夫か?」


直樹が健太の肩を叩きます。




「うん、大丈夫だよ。でも、気をつけよう。ここから先は、ただの観光地じゃないか気がする」


健太は深く息を吸い込み、友人たちに向き直りました。


「行こう。黄泉の扉を見つけ出すんだ」







彼らは神社に向かって再び歩き始めました。


霧の中、彼らの足音だけが響き渡り、未知の恐怖に向かって進んでいく勇気が、静寂の膜を割いていくようでした。


霧がさらに深くなり、三人の視界はほとんど奪われてしまいます。


神社の鳥居をくぐると、健太は不思議な静寂に気づきます。


「なんだ?」


周囲の音がすべて消え去り、まるで時間が停止したかのような感覚が全身を駆け巡ります。


「なんだか、空気が変わったね...」


美咲が小声で言います。


彼女の声は不安と期待で震えています。



直樹は周囲を見渡し、冗談を言う余裕もなくなってきました。


「うん、気をつけよう」



三人は神社の境内を進み、最初に話し合っていた通り、裏手に回り込みます。


そこには古びた石造りの井戸がありました。


井戸の周りは異様に静かで、霧が井戸の口から静かに立ち昇っているようでした。




健太は井戸の縁に近づき、中を覗き込もうとしてみたが、直樹が手を伸ばして止めます。


「ちょっと待て、健太。これがその...黄泉の扉ってやつか?」



「そうだよ」


健太は深呼吸をしてから言います。




「伝説によると、この井戸は...」


突然、美咲が小さく悲鳴を上げました。


「あっ、何かが私の足に触れた!」


直樹と健太はすぐに美咲の元へ駆け寄ったが、何も見つけることができませんでした。


しかし、その瞬間、三人は同時に井戸から聞こえてくるささやきに気づいたのでした。



「助けて...」


声は悲しげで、遠くから聞こえてくるようでした。


「助けて...」


しかし、その声は美咲だけでなく、健太と直樹にも聞こえていました。


「助けて...」


美咲は恐怖で震えます。


「私たち、何かを起こしちゃったの?」


直樹は決意を固めると、井戸の縁に腰を下ろし、中を覗き込んでみました。


「何かが見えるかもしれない。」



「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」


しかし、その瞬間、井戸から強い風が吹き上がり、三人を後ろに押し飛ばしました。


彼らは地面に転がり、霧の中でお互いの姿を見失います。


「直樹!美咲!」


健太が叫んだが、返事はありません。



彼は霧の中を手探りで友人たちを探し始めた。その時、井戸から再び声が聞こえました。


「こちらへ...」


声に導かれるように、健太は霧の中、井戸の方へと進んでいきました。


そして、彼が井戸の縁にたどり着いた時、井戸の中から見えたものに息を呑みました。



健太の目の前に広がっていたのは、井戸の底ではなく、霧に包まれた異世界の景色でした。


彼は息をのみました。


霧の向こうには、かすかに古びた村が見え、その中心には薄暗い光を放つ古い祠がありました。


「うわ、見に行きたい」


彼の心は恐怖と好奇心で揺れ動きます。




その時、美咲と直樹の声が霧の中から聞こえてきました。


「健太!こっちだよ!」



健太はほっとした息をつきながら声の方向に向かいました。


「ほら、健太、何してんだ。こっちだって!」


直樹がせかします。



「分かってるって!」


健太は二人の元へ駆け寄ります。





そしてこれから先、2度と彼らを見た人はいませんでした。









「頼む。俺たちをここから出してくれ!」


「助けて!」


「たすけてえ」


「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」「助けて...」



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(SARF×カクヨム短編こわ~い話コンテスト優秀賞)道後温泉の黄泉の扉 すぱとーどすぱどぅ @spato-dospado

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