エピソード22.魔鉱石の行方
「魔鉱石が無い……ってどういうこと?」
私はおじさんに質問を投げかける。
魔鉱石の加工を条件に直してもらった。
今更無いのでできませんは、セイタが良くても私が良くない。約束は互いが守ることで成立するっておばあちゃんも言ってた。
「魔鉱石は普段どこで入手しているのですか?」
そんな時、彼が別の質問をする。
「普段は鉱石の販売を生業としている鉱石商か、冒険者ギルドに持ち込まれたドロップアイテムを購入している」
「……何故不足しているのでしょう?」
「魔鉱石は知っての通り貴重なものだ。しかし、この辺りでは昔から鉱山から魔鉱石が取れた。魔鉱石ゴーレムの存在も大きく、供給はそれなりにあったんだ。しかし、ほんの数ヶ月前のこと。その鉱山に突如謎の遺跡が出現した。同時期に時々出現していたゴーレム共の能力が飛躍的に上昇してしまったらしく……」
魔物を強化する遺跡……?
聞いたことが無い。もし本当なら確かに大変だよ!
ゴーレムとは、鉱石などの鉱物を主体にした身体を持つ魔法生物。魔法使いとかが自身の魔力を流して生成するのが一般的だけど、自然界の魔力の影響を受けた鉱石が集まって自然生成されることもある。
強さは主体となる鉱石にもよるけれど、一体につき中級冒険者のパーティで互角と言われる。それが強化されてしまったら、中級冒険者じゃ手が付けられない。
けれど、定期的に倒さないとゴーレムは増えるばかり。
「もう鉱山は手が付けられない状態なんじゃ……」
「ああ、ニアの言う通り鉱山内部には強化済みのゴーレムが蔓延っている」
「そんな……」
上級以上の冒険者は数が多くない。
まして、もし一人いたところでこの状況は変えられない。やっぱり魔鉱石は……手に入らないのかな。
私は半分諦めと後悔で、セイタに申し訳なくなってきた。けれど、
「強化されているとしたら遺跡の内部……それと遺跡の場所は分かりますか?」
「えっ?!せ、セイタ、まさか遺跡に?」
「うん。魔物の強化をするような遺跡は稀に出現する事があるんだ。けど、大抵その遺跡の規模は小さいことが多い。強化の元となっている魔物の核を破壊してしまえば強化は切れるはず」
「な……っ」
"なんでそんな事を知っているのか"という疑問を、口から出る寸前で飲み込んだ。
きっと答えにくい質問だから。
その様子を見て、セイタはこっそり微笑んだ。
「遺跡に魔物……。すまない。場所は聞いていないんだ。ギルドに聞けば知っているかもしれないが」
「魔鉱石を持ってきたら加工はして貰えますか?」
「おぉ勿論だ!なんたって私の命の恩人、それも数少ないニアの友達だからな」
「ちょっと!数少ないは余計だよ!!」
私が動揺している間に話が進んでいく。
ついていけて無いの私だけ?!
そうだ!ナツちゃんは……寝てる。
セイタの服の裾を掴んだまま。
……ふふっ
なんだかいつも通りで、こっちも力が抜けてくる。
色々考えすぎてたけど、多分セイタは気にしていない。私がこんな事で動揺してることもお見通しかも。
「ニア、遺跡の場所を探しに行くけど、着いてくる?」
「行く!」
だから、私がすべきことは、最大限の感謝を込めて彼を手伝うことだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うーーん……ギルドの方も何も分かっていないみたいだね」
「ゴーレムが強化され始めたのか数ヶ月前たっていうし、遺跡が鉱山に出現したって言うのもゴーレムが強化されている場所からの推測でしかないって……、本当に遺跡なんてあるのかな?」
「ない可能性もあるけど、入り組んだ鉱山である以上、まだ発見されてないだけかも」
僕達は冒険者ギルドを訪ねたものの、予想以上になんの収穫もなかった。
ゴーレムの強化によって冒険者が近づけなくなっているから、もしかしたらとは思っていたけれど……肝心の遺跡の場所が分からないとなると、自分達で探すしかない。
強化されているとはいえ、ナツもいるこの状況で負けることは無い。……でも、この鉱山の広さでは数日での探索は難しい。
「ナツ、遺跡の場所とか分かりそう?」
魔力の探知に長けているナツならば、魔力を放っているはずの遺跡を見つけられるかもと聞いてみたけど……
「……むり。強いまりょく………おおい」
「魔鉱石のゴーレムがいるんじゃそうなるよね」
魔鉱石は常に強力な魔力を放つ鉱石。
だからこそ魔道具制作には最適なんだけど……、こういった状況だと探知の障害になりやすい。
「地道に探してみるしかないかなぁ遺跡……」
「おっ?ババ……師匠の息子じゃねぇか。こんな場所でどうした?ギルドに用でもあるのか」
「あ、アルゴートさん!!」
道の端で悩んでいたところ、背後から声をかけられた。振り返ると大量の物資が入った袋を担いでいるアルゴートさんがそこにいた。
「アルゴートさんこそ、こんな場所で何を……?」
「俺は街を出るための準備をしてんだ!バ……師匠に頼まれたもんの解決にも、それなりの道具やら素材が必要だからな。その調達だぜ」
「わざわざ母様がすみません……」
「お前らはなんも聞かされて無かったんだろ?気にすんなって。それよりも」
悩んでいたこちらの表情を見て、アルゴートさんが気を利かせて尋ねる。
「そっちはどうしたんだ?」
「その、鉱山に出現したと思われる遺跡の情報を聞きに来たのですけど……空振りみたいで」
「……遺跡ってのは、あの無駄な魔力を振りまいてるあれか?」
「そうですそうです!周囲の魔物を強化している遺跡……知っているんですか?!」
「そりゃぁ、知ってるも何も、俺の家が建ってる崖の反対側に突然現れてよ。迷惑してんだ」
「場所!その場所に案内していただけませんか!!」
「お、おう……随分食い気味だな。まぁ気になるってんなら案内くらいはしてやるぜ」
「ありがとうございます!」
詰みかけていた魔鉱石の入手に、こうして一つ、進展の兆しが見えたのだった。
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