2忘れることの怖さ

桜N

「悩んでいる間にも気のせいだったはずの忘却は進んだ」

「さーくら。何してるの?」

「ん…いや、あれ、何してるんだろうと思って」

「グラウンド?」

「へえ。あの場所、グラウンドっていうんだ。で、そこでみんな走ったり、練習…かな。してるっぽい」

「…え」

「紬?」

「本当に…忘れてる?ねえ、桜。ドッキリとかじゃないよね?そうだ、どこかに監視カメラとかあったりするんでしょ?どうせ冗談でしょ!?ねえ桜!」

「なに言ってるの?こっち真面目なんだけど」

桜N

「紬がこんなに焦っている。私、そんなに変なこと聞いた?……あ」

「そうだ、忘れ…」

「話には聞いていたけど…マジだったんだ…」

「うん。嘘つきとか作り話とか噂になってるけどね。(小声で)私だって気のせいだと思いたかったのに」

「桜…」

「ごめん。これからこういうのが増えていくことがあると思う。もしかしたら紬の顔まで忘れていってしまう……今こうして話してる内容も」

「っ、桜!それでも……!記憶からは消えても、記録には残るから!だから!しゃ、写真とか…!」

「……ううっ…っ、ぐすっ…!」

「そんな泣かないでよ…私までつられちゃうじゃん…」

桜N

「その放課後、私と紬は抱きしめあって泣き腫らした。途中で偶然通りかかった男子生徒にびっくりされて声をかけられるまで、ずっと」

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