第4話 第1次暗黒期2

 前話では、気持ちのまま話題に関係のないことを綴ってしまったので、ここから軌道修正を行います。


 というのも、ここからしばらく、主な登場人物が、父と母、そして次兄となり、話の性質上、自分の恥も併せて書かなければならないので、私自身書くのに気が乗らず、きっとあなたも読んで楽しいものではないでしょう。それでも、過去を含めて全てが今の私です。私を知っていただくために書こうと思います。お付き合いください。


 私は、中学に上がってすぐ、周囲から無視されるようになり、学校に行かなくなった。


 昨日まで普通に会話をしていた相手が、目が合っても挨拶すらせず、避けられる恐怖は今でも根強く残っている。私自身が行ってきたことがそのまま私に返ってきたのだから、それについては誰も責められないと思っている。しかし、その当時の私には、誰かのせいにすることでしか、自己を保つことができなかった。


 勝手に誤解して私を不良グループに置いておきながら、無視をした同級生のせい。本気で、そう思っていた。


 未成年なのにタバコも吸った。万引きもした。私は明確に法を犯していた。誰かを殴って傷付けた。殴らずとも精神的にも痛めつけた。そんな、因果が返ってきただけなのに、である。

 今であればただただ恥だが、そこを避けて自分を飾ってしまっては、自分が自分ではなくなってしまう。今では本当に反省している。もう二度と同じ過ちは起こさない。


 勝手に誤解されたという部分を補足してみる。


 私は、基本的に善である。誰かを傷付けることは良しとしない。しかしながら、自分が傷付くことも良しとしなかったし、ケンカが当たり前の家だったから、自分が傷付いた時には暴力で訴えた。それが私の普通だったのだ。その暴力性が不良グループの目に留まったのだろう。

 そしてそこが自分の居場所だと本気で思っていた。そう思ったのは単純にそこで私が求められていたから。間違った居場所だろうが、人は誰かに求められたときに承認欲求が満たされ自己肯定感が上がるという。そういうことだったのだろう。

 しかし、私は基本的に善であったから、そんな日々に流されながらもそんな自分が心のどこかで嫌いだったのではないかと、自己分析をしている。


 家に籠るようになって、母と接する時間が増えた。最初に進められた(誤用ではなく、ほぼ私の意志とは無関係にの意)のはカウンセリングに行くこと。


 カウンセラーと一緒にただただゲームをして1時間を過ごすために、混雑する待合に辟易した。しばらくすると行かなくなった。


 そして、不登校児が集まる場所にも行った。そこで声を掛けてきたのもチョット悪さしてますってやつだった。


 母とは何度も

「放っておいてくれ!」

「じゃあ、どうするの!」

みたいなやりとりがあった。放っておいて欲しい子どもに放っておけない親心。今ならそんな親心がわかるが、当時の私はそこでも暴力に訴えた。

「産んでくれなんて頼んでない!」

心無い言葉を吐きながら、殴る蹴るを繰り返した。


 母とは、相容れないとこの時から感じていた。その代わりに父の存在がまだ救いだった。


 昼間に起きているとうるさいので、夜中に起きるようになった。深夜ラジオを聞きながら、Hip-Hopに出会った。ずうっと聞いていた。没頭出来て自分の気持ちを歌っているようで共感した。しかし、狭い家だ。音量が大きすぎたのだろう父には普通に怒られた。そう。普通に。


 自分は普通じゃないと思っていた。しかし父にとって私は、普通の子どもだった。身体障害者のことを「カタワ」、精神障害者のことを「キチガイ」と差別するような昔の人だ。確実に私の病気については理解していなかった。だけれど、父は私のことを自身の子として父なりに普通に、学校に行かなくなる前と同様に扱ってくれた。


 その距離感が心地よくて、私は母ではなく、父に傾倒していったのだと思う。しかし、父が無理に私と関わろうとする時があった。それが鬱陶しくて手を上げた。力では絶対に敵わない父を殴るのは怖く、当然反撃され返り討ちに会うのを覚悟した。

 私の覚悟は裏切られ、父は亀になった。決して殴り返すことなくひたすらに耐えるその姿に私は混乱した。しかし、一度振り上げた手を下すことができず、泣きながら父を何度も殴りつけた。あの時、殴り返されていたら、今の私は形成されていなかった。


「ケンカは泣いたほうが負け。そこでおしまい。」


 父の言葉だ。殴られるほうが泣かず、殴るほうが泣く。私は父に負けたのだ。それを境に私は、父に全幅の信頼を寄せるようになった。



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少しずつ読んでくださる人が、増えてきて嬉しいです。

この作品は、少しでも多くの方にこんなやつでも生きていられる事を知って頂きたいと思って書いています。

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