六つめの不思議、女子トイレの花子さん

 扉を開けて女子トイレの中へと足を踏み入れる。

 どこからか水滴が水の中へと落ちる音が響いている。


「花子さん、遊ぼう、遊ぼう、遊ぼう」


 誰も喋っていないのに、姿の見えない誰かが花子さんへ声を掛けた。


「はーい……何して……遊びたい……? 隠れんぼでも……する……?」

「あっ、私たち、そろそろお家へ帰ろうかなって思ってるの」

「クスクス……だめだよ……もう取り消せない……」

「えっ、あの、いや、違うの違うの」

「それじゃ……花子が鬼になるから……10数える間に……隠れてね……始めるよ……」

「えっ? えっ!? ちょ、ちょっと待って! ちょっと待ってってば!」

「10……9……8……」

「もしかして始まってる!?」

「7……6……5……」

「この女子トイレに隠れられる場所なんてないよ!」

「4……3……2……」

「早く廊下へ出て!」

「1……」


 花子さんのカウントダウンギリギリで女子トイレから抜け出す事に成功した。


「嘘つき……嘘つき……嘘つき……遊ぶって言ったじゃない……嘘つき嘘つき嘘つきいぃぃぃぃっ!!!!」


 女子トイレの中から花子さんが絶叫する声が響き渡った。


「私たち、隠れんぼして遊ぶなんて一言も言ってないよ! でも、花子さん一人で寂しかったのかな……」


 砂月先生は少しうつむいているかの様だった。

 もし……隠れんぼをして遊んでいたら……鬼の花子さんに見つかってしまった場合はどうなっていたのだろう……。

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