五つめの不思議、廊下に飾られた絵の思い出

 廊下をしばらく歩いていると、左右の壁に子供が描いた絵がずらりとたくさん飾られていた。

 かけっこをしている絵、玉入れをしている絵、綱引きをしている絵、組体操の絵。

 子供たちが体操着を着ていて、どれも楽しそうな運動会の時の絵が描かれていた。

 左右の壁から小さな音が聞こえてきた。

 その音はだんだんと大きくなってくる。

 子供たちの喋る声、ざわめき、時折大人の声まで聞こえてくる。

 突然、大きなBGMが鳴り響いた。

 運動会のかけっこやリレーの時に流れているお決まりのBGMだ。

 子供の声がマイクを通りスピーカーから聞こえてくる。


「バトンは最後のアンカーに渡りました! 一組、二組と並んでいます! 続いて四組! 最後は三組です! 頑張れ三組! 凄い凄い! 三組のアンカー風の様に速い! 四組のアンカーは目の前です! 一組、二組、四組も頑張れ! みんな頑張れ! 最後の最後です! みなさん一緒に応援してあげてください! 頑張れ頑張れ!」


 運動会のリレーがクライマックスを迎える頃、恐らく放送委員であろう子供の実況とBGMは耳を塞ぎたくなる程の大音量だった。


「音が大きすぎてどうにかなっちゃいそうだよ! 次の場所へ行こう!」


 砂月先生は廊下の左右の壁に、絵がずらりとたくさん飾られていた場所から走り抜けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る