四つめの不思議、理科室で蠢く生物

 一階から二階へと上がると、各所に特別教室が立ち並んでいる。

 理科室の扉を開けると、何だか少し埃っぽい匂いがした。


「理科室ってさ……いかにもぉって感じで不思議な事が起こりそうな場所だよね……」


 砂月先生が恐る恐る独り言の様に呟くと、誰もが一度は耳にした事のある鳴き声が足元の方から聞こえてきた。


「ケロケロッ、クワクワッ、ケロケロケロッ」


 可愛らしい一匹の蛙の鳴き声だった。


「「ケロケロッ、クワクワッ、ケロケロケロッ」」


 蛙の鳴き声が重なって聞こえる。


「「「ケロケロッ、クワクワッ、ケロケロケロッ」」」


 次第に蛙の数が増え、どこからともなく鳴き声も増幅してきていた。


「「「「ケロケロッ、クワクワッ、ケロケロケロッ」」」」


 どこにも蛙の姿が見えず、不安が募る程の量の鳴き声だ。

 

「「「「「ゲロゲロッ、グワグワッ、ゲロゲロゲロッ」」」」」


 地を這うような低い蛙の鳴き声まで重なって聞こえてきて、全身に寒気を感じる。

 砂月先生は声にならない声を上げて、理科室から廊下へと慌てて飛び出して行った。


「理科室に蛙の鳴き声ってさ……あまり声を大にして言いたくないんだけど……昔の解剖の授業で使われた……。ごめんごめん! この話は止めよう! さぁさぁ、次の不思議を確認しに行こう! えっ? 別に乗り気になってきた訳じゃないよ? まったくもう……」

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