Chapter.1「Da Capo その⑦」Story Teller:神 七央

奏の部屋に入り

1番最初に目に飛び込んで来たのは、

"ヒーローはにゃにゃんにゃん"

という猫のキャラクターの

50cm程の大きな縫いぐるみだった。


他にも沢山の、

はにゃにゃんにゃんのグッズや、

ドールが飾られていた。


神 七央

『あっ! はにゃにゃんにゃんだ!

懐かしいなぁ。』


緑川 奏

『おお!

君も、はにゃにゃんにゃんが好きなのかい⁈』


神 七央

『うん。 小さい頃の話しだけどね。

そう言えば、君の話し方、

はにゃにゃんにゃんに少し似てるね。』


緑川 奏

『本当か! それは光栄だなぁ!』


そう言うと奏は笑顔で1番大きな、

はにゃにゃんにゃんの縫いぐるみに指を差し、

『あれ!

お母さんに入学祝いに買ってもらったんだ!』

と嬉しそうに七央に向かって話した。


神 七央

『えっ! 高校の入学祝い?』


緑川 奏

『うん!』


神 七央

『随分、

可愛らしい物を買ってもらったんだね。』


そう言いながらも七央は、

高校の入学祝いに大きな縫いぐるみを、

買ってもらった奏に少し引いていた。


緑川 奏

『そんなに可愛らしい物では無いぞ!

物凄く高かったんだ!

1万7千円もしたんだからな!』


七央の感情とは裏腹に、

奏は威張った様なキリッとした表情をしている。


さらに奏は満遍の笑みで、

机に置いてあったデジタルカメラを手に取り、

『これは鬼怒川おじさんに貰ったんだ!』

と言いながら、1枚の写真を見せて来た。


その写真には、

多分、被写体としていたであろう白い花が、

写真の手前にぼやけて写っており、

その奥に居るカップルらしき学生に

ピントがあっているというもので、

撮影場所は校内の様だった。

 

神 七央

『何これ! 盗撮!』


緑川 奏

『なっ! 何て事を言うんだ君は!

見て分かるだろ!

少しボケてはいるが、白い花だ!

体育館の近くに花壇があるだろう!

そこに咲いているんだ!』


七央は冷静さを取り戻し、

顔を赤くして慌てる奏に笑顔で、

『他には、どんなのがあるの?』と尋ねた。

 

すると七央は再び目を輝かせ、

沢山の写真を見せてくれたが、

その殆どがピントの合っていないものや、

フラッシュが焚かれておらず、

暗い印象を受けるものだった。


奏は七央の反応に対して不安になり、

『実は、このマシーンは難し過ぎて、

まだ私には扱い熟ないんだよ。』

と恥ずかしそうに話した。


神 七央

『少し触らせてもらっても良い?』


緑川 奏

『もしかして君、使い方が分かるのかい!

良いぞ! 良いぞ!』


七央にデジタルカメラを手渡す奏。

七央はデジタルカメラを受け取ると、

画面が奏にも見える様に、

奏の隣に寄り添う感じに近寄った。

 

神 七央

『ここを、こうするとほらね。

手前の物にピントが合ったでしょ。』


緑川 奏

『おゝ! ホントだ! 凄いぞ君!』


神 七央

『それで、これをこうすると。』


そう言いながら七央は、

フラッシュを焚き写真を1枚撮影した。


緑川 奏

『凄い! 凄い! 映画で観たやつだ!

このマシーンにも光る機能があったとは!』


その後、

七央は奥にピントを合わせる方法と、

フィルター機能、動画機能を奏に教えた。


奏はメモを取りながら、

『何で君は、そんなに詳しいんだ!』

と言い、目を大きく開き喜んでいる。


神 七央

『お父さんが、

これの古いタイプのモデルを持っていて、

少し触った事があるんだ。』


緑川 奏

『お父さんも写真を撮るのが好きなのかい!

ますます、君の家に行ってみたくなったよ!』


神 七央

『でも、お父さんも、

写真を撮るのは、そんなに上手じゃ無いよ。』


緑川 奏

『お父さんも?

君! 一言、余計だぞ!』


顔を見合わせて笑う2人。

そんな中、

ドアを3回ノックする音が聞こえた。


緑川 安美

『入っても良い?』


安美の声に対して奏は、

『良いけど、重いだろう? 今、開けるよ!』

と言い扉の方へと向かった。


奏が扉を開くと、

ドーナツが3つずつ盛られたお皿と、

アイスティーが2つ乗ったお盆を手にした、

安美の姿があった。


緑川 奏

『わあ! お母さん! 有難う!』


神 七央

『すみません。

メモ帳を拾っただけなのに、

こんな事まで、して頂いて・・・。』


緑川 安美

『全然、気にしないで!

それより、ありがとね。

これからも、

奏ちゃんと、仲良くしてあげてね!』


神 七央

『はい!』


七央との会話を終えると、

安美は奏の方に顔を向けて、

『じゃあ、お母さんは、

未来ちゃん達の飲み物を用意してくるから、

何か用があったら教えてね!』と言い、

七央に笑顔で頭を下げ、部屋を出ていった。


神 七央

『優しそうな、お母さんだね。』


緑川 奏

『うん! お母さんは、優しいぞ!』


お母さんの話しをしている時の奏は、

いつも物凄く幸せそうな顔をしている。


緑川 奏

『あっ! そうだ!

君は、勉強も得意なのかい?』


神 七央

『凄くって程では無いけど、

もしかしたら、教えられるかも。

良かったら見せてみて。』


緑川 奏

『私は、良い先輩を持ったものだなぁ〜♪』


奏は元気よく4冊のノートと、

溜まってあったプリントの山を取り出した。


神 七央

『えっ! こんなに!』


その問いに、奏は笑顔で大きく頷いた。


------------


神 七央:

僕の目の前に居る後輩は、

湊達が言っていた通りの元気な女の子であり、

思っていたよりも、

とても面白く不思議な女の子だった。

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