第56話「絶対真玄包囲網」
予定通り、真玄とゆらぎは昼食をマックにすべく駅前へ。
新作といえどいつも通りのジャンクな味に、彼女はウマウマと楽しそうに美味しそうに食べ。
一方で彼といえば、眉根に皺を寄せて。
(緊張して全然ッ、味なんか分かんないって!!! なんでコイツはこんなに平然とってさぁ、は? 何なの!? 僕、逃げるって言ったよね??)
実に不可解だ、その上。
(こんなコト気付かなきゃよかった…………どうしてッッッ、どうして今日! 今日なんだ!!! 今日ってさぁ、原作でエンディングの日付つまり原作の僕が死んだ日じゃん!!! ――逆に考えてむしろよかったのか?)
どうにも不吉な予感がする、しかし逃げなければ詰む事は確かなのだ。
真玄は残ったポテトを全部頬張り、ファンタグレープで流し込む。
そして席を立つと。
「じゃあ僕は行くよ、バイバイゆらぎ……これは今生の別れだ」
「あ、夕飯までには帰ってきてくださいねーっ」
「その反応おかしくない??」
「だって真玄くんは私の所に絶対帰ってくるでしょ? 隣にいる運命なんですから逃げても無駄ですって」
「っ!? ばいばいっ! もう二度と会わないからね!!!」
彼女の澄み切った青い瞳が怖くて怖くて怖くて、彼は転げるように走り出した。
残されたゆらぎは、シェイクをズゾゾゾと飲みながら。
(ふっ、読み通り!! やーっぱり逃げましたねぇ真玄くん、ま、その行動力も魅力的な所なんですが……お手並み拝見といきましょうか)
ゆらぎは既に覚悟を完了しているのだ、それ故にゆらがない。
彼女は紙ナプキンで指を拭うと、スマホを取り出して。
(白馬の王子様が御出立になられた、歓待準備よろし? ……送信っと)
すると、次々に返信が帰ってきて。
一方で真玄といえば、ひとまず実家に帰って荷造りしてから本格的な旅に出るのだと駅へ。
出発地が駅前のマックなのだから、誰にも邪魔されず即電車に乗れる、その筈だったのだが――。
「――待てぃ!!! 何処へ行こうってんだぁマーイフレンドぉ……まさかお前だけこの天国と地獄の肉食パラダイスから逃げようってんじゃねーだろなぁ!!!」
「げぇ素丸ッッッ!? なんでここに!?」
「ふっふっふっ、とあるお方がな……お前を阻止すれば継奈が搾り取ってくれるペースを一日減らしてくれると…………乗るしかねぇよなぁ!!! 愛に限りはないが金玉の中身には限りがあるんだよぉ!!!」
「……僕の敵になるってコトかい」
「そうだぜ親友……、お前もさぁ早くカノジョ持ちになるんだ神妙にお縄につけーーいッ!」
「くそっ、まともに戦ってられるか逃げさせて貰う!」
そして追いかけっこが始まった、真玄は回れ右して走り始める。
当然、素丸も走り出して追いかけ。
(考えろッッッ、これは絶対にゆらぎが手を回したんだ!!! 仮に僕が逃げ切ったとしても素丸は駅に戻って張ってればいいだけ、圧倒的に僕が不利だ……)
人混みの中、すいすいとぶつからずに進んでいく真玄。
対して素丸は度々衝突しそうになりながら進み、真玄の背中を悔しそうに睨んで。
(流石は僕っ! 凌辱エロゲ主人公として相応しいフィジカル!! ――でもなんか引っかかるんだよね、……なんだこの違和感)
まるで何かが逆になっているような、そんな気すらある。
この違和感を見逃してはいけない、そう確信した真玄は更にスピードを上げて駅ビルの中へ逃げ込んだ。
エスカレーターを走って四階へ行き、非常口の前でひと休憩、まだ見つかる訳がないと。
(――はぁ、はぁ、はぁ……きっと駅ビルの中に追っ手が居ると見ていい、ゆらぎはどこまで動員した? 素丸だけってのは考えられない)
むしろ。
(クラスの奴ら、それから……先輩後輩、持ちうる限り全ての――)
「居たっ!」「こちらC班真玄発見! 繰り返す真玄発見!」「下の階のB班に非常口をエスカレーター、エレベーターと階段全てを封鎖させろ!!」「あのお嬢様にも連絡しとけ、黒服さん達の応援を頼もう!!!」
「いやマジで何処まで協力頼んでんのっていうか、アリカちゃんチの配下かまで動員してるのズルくない!?」
真玄は脱兎のごとく走り出した、己なら、そう、己のフィジカルならこの場を切り抜けられる。
だが何だろうか、この強烈な違和感は――。
(ッッッ!? うああああああああああ、そっか!!! そうだった忘れてたあああああああ!!! これ素丸の!!! 護士木さんのイベントだあああああああああ!!! 中盤終わりぐらいにあった、護士木さんをわざと逃がして町中で凌辱させながら素丸に追跡させて最終的に絶望した顔を楽しんでたあの趣味悪すぎるイベントおおおおおお!!!!)
しかも。
(お祭りファンディスクっぽいオールスターで対象が僕になってるから、戦力過剰になってるじゃん!? え、ザマァでもされんの僕!? 捕まったらどーなるの!? ゆらぎにマジで監禁でもされるの僕!?)
ヤバい、これは本当にヤバい。
絶対に追いつかれてはならないし、捕まるなんて以ての外。
「うおおおおおおおっ!! 負けるもんか!!!」
「来るぞっ!」「いかせるかぁ!!!」「氷里を捕まえたらオレ……朱鷺先輩に筆下ろししてもらうんだ」
「一瞬だけでも見逃してくれたら、可愛い子揃いでシスターっぽい制服が可愛いと評判の隣の女子校の子達と合コンセッティングしてあげるッ!!」
「くそ見失ったぁ!!」「真玄はドコだぁ」「お前裏切るのか!?」「聞こえてるか護士木ッッッ、パターンB! 繰り返すパターンB! 下の守りを固めてくれぇ!!!」
「あーばよッ!!(……この階はいいけど、いやはやどーやったら逃げれるの??)」
護士木継奈、彼女の身体能力はさほど高くない。
だが彼女の趣味である水晶占いは、高い精度で的中するからして。
(…………一度、護士木さんを無力化してからの方がいい)
という事で、真玄は継奈攻略戦に挑むことにしたのであった。
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