第48話「貴男色に染まりたい」
今世では年齢もあってかアダルトコンテンツに触れる事が、前世と比較すると圧倒的に少なくなっている真玄であるが。
とはいえ、同世代と比較すると圧倒的なエロ摂取量を誇る。
それ故に、好みの癖のエロマンガを教えるのは容易であるのだが。
(――単に教えるのは僕にとっての損だろうね、教えた途端にそっち系のアプローチが待っているのは想像に難くない)
極上の美少女に貴男の色に染まりたいから教えてくれ、というのは普通の場合ごほうびである。
だが相手がゆらぎである以上、真玄にとってはマイナスでしかない。
しかし断った場合、死亡フラグという特大のマイナスが発生するのであれば。
「わかった教えよう、はいプリン」
「やった!! 教えてもらえる上にプリンまで貰えるなんて!! 返さないですよプリン、これもう私のですからね!!! やったーっ!!」
「プリンを返せとは言わないけど、教えるに至って条件があるよ」
「ふぇ、ふぉーふぇんふぇふ?」
「プリン食べながら言わないの、まぁ条件です?
って言ってるんだろうけど」
「ふぃんふぉーん、うまうま、ん~~、美味い!!」
「拍手するのか食べるのかどっちかにして??」
こうして楽しげに、美味しそうに食べてる姿だけなら普通の美少女なのにと真玄は心の中でため息を一つ。
だが表面上の可愛さとエロさに流されてはいけない、ここはきっちり利益を出していく所だと彼は気を引き締め。
「じゃあ条件だけど……、僕の性癖を知るに相応しい対価を君が決めてよ」
「へっ、私がです!?」
「敢えて言おう……ゆらぎ、君を試していると!!」
「な、なんだってーーッッッ!?」
くわっとゆらぎは目を見開いた、今までは割とスムーズに何かと教えて貰えていたのに。
何故か今回は対価が必要と、しかも相応しい対価ときたし。
その上で、試していると、確かにそう言ったのだ。
(これはお嫁さんとしてどこまで尽くせるか試されてるってコトぉ!? つまりお嫁さんって認めて貰ってる…………間違いない、これは妻としてどこまで尽くせるか試されているッッッ!)
(え、なんでそんな幸せそうでやる気に満ちた顔を!? ……くそっ、何かを間違えた気がする!? なんだ、なにがトリガーになってそんな顔を!?)
真玄の額に冷や汗が流れる、今の会話をどう勘違いすれば幸せそうな表情になるのだろうか。
彼女が何を言い出すか、胃をキリキリさせながら返答を待って。
「――――分かりました! 氷里くんの好きな時にポニテにする権利を差し上げましょう!!!」
「僕の意志が介在するのはポニテへの冒涜なので却下」
「くっ手強い……、ならばエッチな下着をつけましょう!!! 見せませんけど! 絶対に見せませんけど報告ぐらいはしてあげてもいいです!!!」
「成程、君は見せなければ多少の恥ずかしさは飲み込めると……でも却下、えっちな要求をする気はないよ君と違ってね」
「そ、そんな……男の子はそういうの好きって皆言ってるのに~~っ!! ならっ、労働! 家事の役割の殆どを私が! そして……登下校中に氷里くんの鞄を持ちます、これでどうだッッッ!」
「(最終的に命がかかってるし)ダメだね、物足りない」
「(お嫁さんになる覚悟として)物足りないって……!? くぅ~~、どーすりゃいいんですかぁーー! あと私に残ってるもの、ううっ、エッチなのはダメだしそもそも過激なのは私が耐えられないしぃ……」
ぐぬぬと悩み始めたゆらぎに、真玄は一安心しながらも油断しないぞと見据える。
その真剣な表情に、彼女はこれは期待されている、もっと彼に尽くせる可能性が残っているのだと奮起して。
「――――見えました希望の光! くらえっ! 私の生AMSR台本券!!! いつでも好きなときに囁いてあげます! だって好きなんですよね私の声、その上で内容も好きにさせちゃいますさあどうだ!!! …………おしえろー、おしえるのだー、もう私に出せるものはないけどおしえるのだ癖なエロマンガを~~」
「どーしようかねぇ……」
う゛~う゛~と唸り始めたゆらぎに、真玄は思わず可愛いと口走りかけたが。
すんでの所で飲み込み、おほんと咳払いをした。
彼女から引き出せる利益はここが限界だろう、更に先を求めれば精神的に崖っぷちに追い込むことと同義であると。
「ま、それで手を打とう。明日か明後日にでも買ってくるよ。三冊ぐらいでいいかい?」
「ふおおおおおおおっ!! やったー! 勝利! 私の勝利…………?? え、でも対価が大きすぎ……ううっ、で、でも……っ!」
(ヨシッ、今回は完全に主導権を握れたし。そう簡単にゆらぎの要求が通らない事も教えられただろう……そうだ、僕は君の理想と違って強欲な男なんだ、よく覚えておいて幻滅するといいよ!)
(生ASMR……どんな事を言わされ……ううん、でもお嫁さんとしてやり遂げますよ氷里くん! それにしても……Sッ気ある所もゾクゾクしましたね、亭主関白的なのも素敵っ! きゃ~~っ、僕の女なら三歩後ろを歩けって言われちゃうんですかねっ!)
真玄は己が勝利したと上機嫌で、ゆらぎからの好感度が更に上がってしまった事に気づかなかったのであった。
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