第47話「ライク ア エロマンガ」
先日は死にたいほど恥ずかしい目にあったゆらぎであったが、想い人である真玄に特殊性癖がない事を知れたのは不幸中の幸いであった。
となると気になるのは、彼のポニテ以外の性癖である。
愛する彼には悪いが、スマホやパソコンの中に答えがあるのではと無断でこっそり探った彼女であったが。
(くっ、流石氷里くんガードが堅いですね。エロ本を探しましたが部屋の何処にもなかったですし……)
(……なーんか昨日からゆらぎが挙動不審っていうか、僕が夜寝てる間に部屋の中を漁ってたみたいだし……何が目的か聞いた方がいいのかぁ)
彼としてはエロ本は見所持であるし、スマホとPCの閲覧履歴は逐一その場で消してあるので見られても問題ない。
とはいえ、こうして学校でも探るような目で見られては落ち着かず。
(やぶ蛇になりそうだから言いたくなかったけど、夜中に僕の部屋漁ってたことを言う? ……ゆらぎはチョロいって判明してるからな案外それでいけそうだけど……)
最悪を想定しようと、真玄は真面目に授業を受けているフリをしながら考えた。
(仮に気づいてたって言ったとする、その場合にゆらぎの反応は何だ? 「さすが氷里くん知ってて見逃してくれてたなんて懐のの広いヒト! 大好き愛してる!」と好感度が上がってしまう、絶対にそうだッッッ、ならゆらぎの中の僕の理想像が上がって…………死だ、僕はエロゲマエストロだから知ってるんだこの手のヤンデレは例え僕が悪にならなくとも理想から外れただけで殺しにかかってくるって!!!)
相も変わらず、前世で培われたエロゲ脳に囚われてる男である。
彼は彼女のことを、デッドエンドを量産する危険極まりないヤンデレと認識してしまっていて。
故に慎重に行動せねばならない、次に死ぬのは老衰でありたいのだ。
(認めよう――僕はゆらぎに好意を抱いている、ぶっちゃけエロい目で見てるし死亡フラグとか原作とか抜きにすれば、そりゃもう告白してたよぐらいには。でも、でもだ)
いくら好意を持っていても、愛してはいない。
然もあらん。
(――――いくら顔がよくて性格もよくて、体もエロくて最高な子でもね? そう、声が超絶好みでもう全てが僕の好みすぎる子だとしても!!! なんかもう恋人になった方が楽になるんじゃないかって思えても!!! 盲信型ヤンデレは正直付き合ってて疲れそうだし、僕の死亡フラグ持ってる子と恋人になりたくないよ?? だって怖いもん!!!!!!!)
ハイスペックな陵辱エロゲ主人公に転生したというのに、その全てを己の命の為にしか使わないのが氷里真玄という男である。
だから、彼女がどんな目論見で部屋を漁っていたとしても立ち向かうのみ。
彼がそう決意を固めていた一方で、ゆらぎは。
(やはり氷里くんは強敵、運命の白馬の王子様だけはある……、――――はぁ~~んっ、今日も横顔カッコイイ……絵になる、こっち見て欲しい……、でも真面目に授業受けてる姿、ふぅ~~イイッッッ…………!!!)
真玄の性癖を探るという目的を少しばかり忘れ、彼に限界化していた。
なお、授業はまったく聞いておらず後で二人っきりで勉強を教えてもらう算段までしている。
彼女は授業が終わると、トイレに行くフリをして継奈を廊下に連れ出して。
「お願いっ、力を貸して継奈っ! 噂では一足先に安井くんと大人の階段に登ったとかなんとか……是非ともそのお力を私に! なにとぞーーっ!」
「よいぞよいぞぉ、素丸の財布と胃袋と股間の玉袋の握ったウチに隙はない! いざとなったら鎖と首輪よ、さぁ何でも聞くがよーい……!」
「なんと頼もしいお言葉! ではではっ、それがですね――」
この場に真玄が居たら、いつの間に食われてたの!? だの、逃げられなかったのか……南無と言った所である。
なお、素丸は数日前から風邪で休みであるが実際の所は継奈に隙を見せてしまったが故に押し倒されて初体験で搾り取らた結果で。
それを武勇伝として聞きながら、ゆらぎは継奈から一つの方法を提案された。
――――学校が終わり帰宅後、夕食後である。
「それで話って何だい? もしかして晩ご飯が唐揚げにハンバーグと僕の好物の欲張りセットだった事と関係ある??」
「それはですねぇ、もしかすると関係あるかもですねぇ……」
「なるほど、じゃあ護士木が好んで着てる童貞を殺しそうな服でミニスカっていう君にしては珍しい服装なのが関係してるのかい?」
「それもぉ……ありますって感じ?」
「…………ふっ、いつまでそうやって誤魔化す気だい? 僕に奥の手がないと思ってるのかい?」
「なんですと!? 奥の手!? どゆことぉ!?」
いざとなると恥ずかしくてモジモジしていたゆらぎは、真玄の不敵な笑みに目を丸くした。
そう彼は決意をしただけで終わる男ではない、自称・原作知識を活かせる男である。
(色仕掛け? 効果的だけどそんなの下策だし最終手段だ、食後であるが故に……一番効果的な手を僕はしっているッッッ、今回はそれを用意させて貰ったよ! さぁこれで……全てを晒けだして貰おうか!!)
彼は食べ終わった食器を運ぶついでに冷蔵庫へ、そして奥に隠してあったソレを取り出す。
彼女はテーブルに置かれたソレを見ると、悪魔を見るような厳しい目で彼を見て。
「そんな……こっ、この悪魔め! そんなモノに私が負けるとでも!?」
「え、じゃあこの駅前のデパ地下で買ってきた一個千円のテレビで話題のプリン要らないんだ」
「うわああああああっ! 嘘です嘘です! なんでも言うからプリン! プリンぷりーずっっっ!!! 大好物なんですぅ~~っ!!」
そう、真玄が用意したのはゆらぎの大好物であるプリンであった。
彼はそれを密かにウーバーで買い、玄関まで届けて貰って居たのであった。
「じゃあ……、なんで僕が寝てる間だに部屋の中とスマホとパソコン漁っただとか、授業中も妙に見てたとかさ、理由を教えてよ」
「うぎッ!? き、気づいてたんです、く、ううっ、でもプリンと私たちの未来の為なら……」
「なんで未来??」
「しかたないっ、言いましょうプリンの為なら私は恥じらいを捨てるッッッ!!!」
「拾ってもろて」
「ズバリ! 氷里くんのポニテ以外の性癖を教えてください!!! 具体的には癖なエロ漫画を教えてください勉強するので!!!」
「…………なーるほどなぁ(ふふふ、怖いぜ、僕の危険探知レーダーがビンビンに反応してるッッッ! 迂闊にノーと言えば死亡フラグ一直線だって!!!)」
だが恐れて逃げていては何も解決しない、真玄は強気で行こうと返答案を慎重に練り始めた。
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