第34話「発見! ベッド下のエロマンガ」
実は真玄は独占欲の強い男と噂が流れて数日、早く忘れてしまえと祈っていた時であった。
登校早々、彼は挙動不審の素丸に屋上手前の踊り場に連れてこられ。
またトラブルか、と真玄は警戒したのだが。
「頼む心の友よ!! 何も聞かずコレを預かってくれ!!!」
「いや少しは事情を話して? っていうか本……まさか君さぁ」
「あ、やっぱ分かる? 預かって貰うあいだに読んでもいいぜ! 実はそこまでオススメじゃないんだけど、中々に使えるんだぜ!!」
「君ねぇ、僕の部屋にゆらぎが入り浸ってるって分かってるのかい?」
「そこを何とか!! こっちもピンチなんだ!!!」
深々と頭を下げて拝み倒す素丸を見て、真玄は深々とため息を出した。
大事な親友の頼みだ、エロ本を預かるのも吝かではない。
とはいえ、預かるからには理由を聞きたい所でもあり。
「素丸の頼みだし、ちゃんとワケを教えてくれたら預かるよ」
「くっ、背に腹は代えられないかッ! ……あーなんだ、そのだなぁ」
「なんで照れてるの?? もしや恋愛がらみかい??」
「…………真玄は結構鋭いよなぁ、うん、まあそうなんだ、近いうちに護士木が来るんだけどさぁ。母さんにそれ知られちゃって」
「ははーん? 護士木さんにバレたくないし、君のお母さんも部屋の掃除をしようとするからバレたくないと」
「そうなんだ頼むッッッ、他はまぁ見つかっても俺的にはそれほどダメージがないんだけど。その三冊だけは……」
「は~~~あ、仕方ないなぁ。一週間だっけ? 預かっておくよ」
「恩に着る!! いずれちゃんと返すぜ!!!」
そうして、真玄は素丸のエロ本の中でも特に見られたら性癖を疑われそうな三冊を預かったのであるが。
内訳は中身はハードな調教モノ、胸くそ悪めの陵辱モノ、ファンタジー系の陵辱モノ。
どれも真玄の趣味ではないのはともあれ。
(全部違う作家だけど……、等身高めで肉感的な巨乳の…………あ、なるほど、護士木さんと違うタイプってのもありそう。素丸も実はけっこう気配りするタイプだからなぁ、ガンバレ素丸、護士木さん)
友人の恋路に幸あれ、と真玄は祈り。
放課後、家に帰ってベッドの下に放り込んで翌日にはエロ本の存在を忘れた。
翌週、素丸からの催促で思いだし返して終わる、その筈だったのだが。
――三日後の夜である。
「――――うわちゃ~~~っ、まーた負けたぁ。ここのステージむっずーーっっっ!!! ……氷里く~~ん、そこの飲み物とってー……って、そうだお風呂行ったんでした」
いつもの様に真玄の部屋でゲームをしているゆらぎであるが、今日はベッドの上ではなくベッドを背もたれに。
その方が、隣で勉強をしている彼の顔が見やすいと気づいたからだ。
それはそれとして、ゲームの区切りもついたしと伸びを一回、そのままゆっくりと横に倒れ込む。
ゲームの興奮で火照った体にヒンヤリとした床が気持ちいいと、真玄が見ていないことをいいことにゴロゴロと転げ回る、すると。
「――――あれ? ベッドの下になんかありますね?」
そう、ゆらぎは発見してしまった。
真玄が素丸から預かり、速攻で忘れてしまったエロ本を見つけてしまったのだ。
奥の方にあったソレを、彼女は腕を延ばして引きずり出して。
「なんですかねこの本、前にチラっと見た時には無かった筈ですけど…………。ちょっと見てみましょうかっ!」
真面目な彼が隠す程の、しかもベッドの下の本だ。
サイズも大判コミック数冊分であるし、もしかして、と期待と後ろめたさ、背徳感に目を輝かせながらビニール袋を開こうとし。
その瞬間であった、ぺたぺたと足音がして。
「ッッッ!?」
「――ふぅ、上がったよ。君は入って行くかい? それとも隣に戻って?」
「そ、そうデスネ!! 今日は隣に帰ってから入りますからお気になさらずぅ!!!」
「うーん? どうしたの?? なんかヘンな感じするけど……」
「ナ、何もないですヨー、ではではっ、まーた明日ぁーー!!」
「うん、また明日ね……??」
エロ本の事などすっかり忘れている真玄は、アニメの録画でも忘れたのだろうかと首を傾げ。
いっぽう、慌てて帰ったゆらぎは。
「ど、どうしよう持って来ちゃったっ!? 思わず持って来ちゃったんだけどぉ!?」
その手には、彼が戻ってきた瞬間に背中に隠し。
己が部屋から出る時にも、うっかり彼の視界から隠して持ち出してしまったエロ本が入ったビニール袋が。
ここは素直に謝って返すべきだろう、しかし彼女は好奇心に抗えず。
「ちょっとだけ、うん、ちょーっとだけ見ちゃいましょうか。氷里くんの好みが分かるかもしれませんし? そう、これはリサーチ、少しばかり卑怯ですけど恋は戦争って言いますし調査は肝心で――――」
ゆらぎはウキウキしながら寝室に向かい、ベッドにダイブするとエロ本を袋から出し。
「…………………………ひぅっ!?」
目を丸くした、彼女は己が性的な事柄を苦手としている自覚もあるが。
だがそれ以上に、予想していたより遙かに刺激的すぎるイラストが目に入ってきたからだ。
「こ、これっ…………氷里くん!? う、ウソっ、嘘ですよねッッッ???」
まさかこんな、こんなコトってとゆらぎの肩が震える。
こんなに過激で、ともすれば痛そうな、可哀想とすら思えてくる特殊なプレイが好みなのだろうか。
もしそうなら、己は彼を満たすことが出来るのだろうかと。
「ううっ、で、でも……読んで、読んで覚えておかないとぉ…………」
彼女はホラーより怖いと、同時に過度な羞恥心に苛まれながら一ページ一ページ読み進め。
そして時折気絶しつつ、朝までに頑張って三冊全てを読み終わり。
――最後に、真玄が起床する少し前に決死の形相で彼の部屋に入ったのであった。
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