第28話「おニューの下着」
おっぱいランキング騒動の翌日、ゆらぎは下着を買おうと決意した。
いつ見られてもいいように、そして、出来ることなら可愛い物を……とネットで注文したのであるが。
数日後、届いていざ開封してみると。
「あちゃー……こりゃあ失敗しちゃいましたねぇ……返品、いやー……着てみるかっ! ちょっとはしたないけど、う、うん氷里くんの反応も気になるし見せちゃおうかな??」
ゆらぎはテーブルに広げたブラとパンツのセットを前に腕組みをして考える。
透け感が可愛いレースの大人っぽい黒、これを見せるのは恥ずかしい、顔から火が出そうなほど恥ずかしい、彼以外に見せるのは同性であっても遠慮したいが。
(……いつも私ばっかりドキドキさせられてるし、う、うん、偶には氷里くんもドキドキさせないとッッッ!! 負けっぱなしなんだから偶には勝ちたい!!!)
どうせだったら、メイクもしておきたい、万が一を考えて口紅にも拘っておきたい。
今は夕食後で一時的に自室に戻っている、なら彼が寝る前に準備を終わらせなければならない。
彼女がドタバダと準備を開始した一方で、真玄といえば。
(明日は祝日で休みかぁ……、おっぱいランキング以降は朱鷺先輩も大人しいし、ゆらぎの耳にエロワードが届くような事もなかったし。後でゆっくり風呂に浸かって寝るかぁ)
高二の時期であるが最難関大学合格確実であるが、勉強に逃避、もとい優等生らしく勉学に励んでいた真玄は手を止めて伸びを一回。
ゆらぎも夕食後の隣に戻り、今日はもう来ないだろう。
明日が休みならば夜更かししても問題なく、ならば。
(…………もしや、エロ動画を見るチャンスでは?? 万が一に備えて自己発散しておく絶好の機会じゃん!!)
どうしてそれに気づかなかったのか、真玄は勉強している場合ではないと勢いよく立ち上がる。
優等生である事を第一に人生を生きてきた彼の部屋には、エロ本なんて存在しない。
だが、ネット上にはエロコンテンツなど腐るほど存在しているし、実の所、彼のスマホの中にはオカズに使えるものが多少なりとも入っている。
「ふんふんふーん、そう言えば素丸がいいサイト見つけたとか言ってたな。今日はそれを見て……、あ、ティッシュを用意して、そんで匂いが残るっていうからファブリーズとティッシュを捨てる為のビニール袋も……」
恋人じゃない女の子と半同棲しているのだ、出来うる限り気を付けておかないといけない。
そんな気遣いがゆらぎの好感度を上げる一因になっているのに気づかず、真玄はいそいそと用意。
二十歳になったら完全な一人暮らしをして、エロゲー三昧だと決意しつつ自己発散の準備を完了、いざ行かんパライソへ――。
「――――って、あんにゃろッ! 何て物を教えるんだよ……絶対に嫌がらせだ、自分で見つけてダメージくらったから僕も巻き添えにする気だったんだな素丸めッッッ」
真玄は脱いでいたパンツとズボンと掃き直して、スマホで素丸に怒りのメッセージを送り始めた。
だってそうだ。
(なんでネットにアップしてんだよ朱鷺先輩いいいいいいいいい!!! 童貞食うのはいいけどさぁ、それを撮影して荒稼ぎとかさぁ……)
確かにエロい、だが相手役の男子は真玄の顔見知りかもしれなくて。
そうじゃなくても女優が朱鷺先輩なのだ、次に会った時に気まずいもんじゃないし、万が一、その時に真玄の真玄が真玄してしまって、それを見つかってしまったら最悪と言うしかない。
彼はやり場のないムラムラを抱えながら、次のオカズを探そうとしたのだが。
――コンコン、コンコンとノックが、彼はパンツとズボンを履いた後でよかったと胸をなで下ろして。
「居るよ、まだ寝てない。忘れ物かなゆらぎ?」
「…………へへっ、実はちょっと氷里くんに見せたい物がありましてねぇ」
「見せたい物? それでドアの隙間から顔だけ見せてるの? 新作ゲームでも買ったのかい? それともレトロゲーとかボドゲ?」
「うーんと、そういう類じゃないんですけど。エヘヘっ、私としてもですね、恥ずかしいんですけど、でもでもちょっと見て欲しいっていうか……」
「地味に焦らすねぇ、恥ずかしいけど見て欲しいもの?」
真玄は首を傾げた、ゆらぎは恥ずかしがり屋だしエロい服を買って見せるという事などしないだろう。
となると、何か恥ずかしい失敗してそれを共有したい、愚痴を聞いて貰いたいという塩梅であろうか。
ムラムラを忘れる為にも、彼女に時間を割こうと彼は決めたのだったが。
「…………」「…………」
「別に入ってきていいんだよ?? どうしたの? そんなに恥ずかしいなら無理しないでも……」
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ、いざってなるとですね、こう、すっごく恥ずかしくなって来まして……で、でもでもでも、見せますからっ、見せますからしばしお待ちをッッッ!!!」
「うん、待つけど……?」
待つこと三分、ゆらぎはモジモジして一向に部屋へえ入ってこない。
彼女は真玄をちらちら見ては顔を赤くして、綺麗で長い銀髪を揺らす。
こちらからドアを開くべきだろう、彼は椅子から立ち上がってドアに近づいて。
「開けるよ? いいかい?」
「あわわわわわわっ、ううううううう、い、いいですよ!! ひと思いにやっちゃってくださいな!!!」
「じゃあ遠慮な……………………ッッッ!?」
ドアを開けた真玄は硬直した、目が離せない、いったいどうしてと疑問が浮かぶが答えなんて出てこない。
(なんで、えっっっろい下着姿なんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!)
どんな反応をすべきか、真玄は猛烈なムラムラに襲われながら途方に暮れたのであった。
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