第24話「ポニテ」
真玄のポニテセックス宣言に教室は静まりかえっていた、最初は誰もが冗談だと思ったが。
目が本気で、声に熱が入りすぎている。
そんな中、ゆらぎがおずおずと質問した。
「えっと、その……氷里くんってポニテが好きってコトぉ??」
「然り、ポニテこそ至高なれば」
「じゃ、じゃあ……そ、その、例えば、例えばの話なんですけど…………私のポニーテール姿、みっ、見たいですか!!!」
言った!! と真玄以外の全員が拳を握りしめる。
今までじれったいと感じる二人の関係であったが、ゆらぎが一歩踏み出したとクラスメイト達は興奮気味で。
固唾をのんで真玄の反応を待つ姿は、当人であるゆらぎより緊張していた。
(ゆらぎのポニーテール姿か……)
一方で彼は燃える情熱の中で、じっくりと彼女を吟味していた。
といっても、具体的に言えばポニーテール姿を想像しているだけなのだが。
「――そうだね、君の長い銀髪ならポニテは特に映えるだろう」
「っ!? じゃ、じゃあ!!」
「だが!! それじゃあダメなんだ!! いいか、これはフリじゃないぞ絶対に今ここでポニテになるんじゃあないッッッ、それはポニテへの冒涜である!!!」
「ど、どういうこと!? 似合うってこと!? でもしちゃダメなの!?」
それは当然の疑問であった、女子達はゆらぎと同じく疑問の表情。
クラスの男子達は、あー……、と察した顔で頷く、同じ男としてロマンに理解を表した。
「そうだ、僕の理想のポニテは……言って貰って、頼んでやって貰うものじゃないんだ――あくまで自然に、必要だからするのがイイんだッッッ、運動の邪魔になるから後ろに纏めた……その結果であるべきなんだよ!!」
「なあ真玄、素朴な質問なんだが一ついいか?」
「何でも聞いてくれ素丸、ポニテに関することなら僕の好みの全てを答えよう……!!」
「セックスの開始前に、女の子が激しい運動するからってポニテにしてたらお前的には興奮ポイントなのか?」
「勿論だ!! 僕は理性を捨てて襲うだろう……」
「なら――それが雪城さんだったら?」
「やっ、安井くん!?(セックッッッ!? で、でもナイス質問!!)」
素丸のストレートすぎる援護に、ゆらぎは恥ずかしがりながら喜んだ。
実際にそうするかはともあれ、知っていると知らないでは大きな違いだ。
もしかすれば、真玄とそういう甘い関係に……果ては結婚して第一子は女の子で庭のついた一軒家で大型犬と共に……と彼女は思わず未来予想図を脳裏に描いたが。
「あ、ゆらぎはちょっとそういう目で見れないかなーって」
「なんでェ!! なんでなんですかぁ氷里ぐん゛!! なんで私はそういう目で見れないんですか!!! 私のポニテ姿似合うって言ったじゃん!!!」
「いやいやいや、だって僕ら親友だし、君の親御さんからも頼まれてるし、その信頼を裏切るわけにはいかないよ、――――大丈夫、君の処女は……僕が守る」
「ってのは建前として、ホントはどうなんだ真玄? ちょっと俺に教えてみ??」
「ゆらぎがポニテになると襲いたくなるから絶対にポニテにさせない!!! ダメだ……ポニテゆらぎは魅力的すぎるッッッ、そこに体育の後の汗ばんだ姿でブルマだったら…………結婚を申し込んでしまうかもしれない」
「あれ? ねぇ氷里くん、うちとしては過去に体育後にポニテで汗ばんでるゆらぎの姿が何度かあったと思うんだけど……」
「そーだそーだっ! 継奈の言うとおりだーー!! 氷里くんは速やかに答えなさ~~いっ!!」
「むぅ」
痛いところを突っ込まれたと、真玄は唸った。
嘘を言ってもいいが、しかしポニテへの情熱にかけて本当の事を言わなければならない。
「正直さ、エロくて襲いたくなるのと実際に襲うって別だよね?? 性欲のままに襲っても朱鷺先輩みたいになるだけだよね??」
「「「確かに……」」」
ぐうの音もでない正論であった、人間性欲に支配され性欲で突き動くと迷惑な存在にしかならない。
そうなったら、いくら外見がよくても、性格がよくてもだ。
(――僕は……原作の真玄のようにならない!! アイツこそ性欲と支配欲でしか動いていない最低最悪の鬼畜男だッッッ!!)
だからこそ、銀髪ロングの色白巨乳美少女であるゆらぎには手を出さない。
その先に殺される未来が待っているから、何より。
(僕は僕の信じるポニテの神に誓って……性欲には流されない。運動後のポニテ美少女がブルマで汗だくで、うなじのほつれ毛が首筋に張り付いてクッソえろい状態で、汗で体操着が張り付いてブラが浮き出てて、汗の匂いとフェロモンでムワムワの中で羞恥心で下を向いて嗜虐心がソソられるシチュで、発情しながら、せめて優しくして……とか細く震える声で言われない限り、僕は性欲にもゆらぎのポニテ姿に流されない、絶対にだッッッ!!!)
そう固く決意を新たにした真玄であったが、面白くないのがゆらぎである。
どんなに頑張っても恋愛対象外だと、フられたに等しい言葉を投げかけられたのだ。
しかし同時に、大きなチャンスがあるとも希望を見せられてしまって。
「このっ、このっ、このっ、このっ!! これからお風呂上がりにはポニテで氷里くんの部屋に居座りますからね!! 覚悟するんだよオラァ!!」
「おわっ!? 脛ッッッ!? 脛を蹴らないで地味に痛いから!? ごめん、なんか知らないけどごめんだから、帰ったらケーキ作ってあげるから許して!!」
「はー? それで許すと思ってんですか?? バスクチーズケーキにしないと許さないもーん! このっ、このこのこのっ!!」
その日、授業が終わるや否や速攻で教室から走り去った真玄は。
ゆらぎの機嫌を取る為に、必死になってバスクチーズケーキを作ったのだった。
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