第23話「ブルマ」
世界がどうなろうが、真玄のやる事に変わりはない。
というのがデートから帰って、彼が一晩考え抜いた答えであった。
不確定要素が多すぎるが、知ったからには油断せず行くだけであったが。
(うーん、何やってんのさ朱鷺先輩? いや、らしいっちゃらしいけども……)
登校早々、天野朱鷺が起こした騒ぎに遭遇して真玄は思わず首を傾げた。
「た、大変です氷里くん!! 私の体操着が……私だけじゃなくて、この学校の女子の体操着が全部ブルマになってます!!!」
「おいおいおい、テンション上がってきたぜ! なあ真玄、俺達と一緒にブルマ鑑賞に行こうぜ!! きっと履いてる子も居るはずだ!!」
「ちょっと素丸? アンタはうちの権限で却下、絶対に見ちゃだめ見たらコロス」
「ひぃ!? 目がマジだ!? なんでだよ護士木!? おい真玄もなんか言ってくれ!!」
そう、登校した真玄達を待ち受けていたのは、朱鷺による全女子の体操着がブルマ化という騒動。
男子のテンションはバカ上がり、女子は興味津々が半分、戸惑いと呆れが残り半分であるが。
そんな中、真玄は取り繕うまでもなく冷静さを保っていて。
「あ、僕それパス」
「はいぃ!? うっそだろお前!? ブルマに興味ないのかよ真玄!? 俺らが学生にになる前に廃止されたという伝説の体操着だぞ!!」
「流石は氷里くん、男共がみーんな浮かれてるなか冷静だねぇ。ゆらぎを任せるに相応しいってウチは誇らしいよ」
「ははっ、護士木さん誉めてくれるのは嬉しいけど。割と純粋に興味ないだけなんだ」
苦笑いしながらそう言った真玄に、ブルマを手にしたままのゆらぎは問いかけた。
「ね、ね、氷里くん、それって体操着はブルマより短パンの方がいいってコトです??」
「うーん、何て言ったらいいのかなぁ……」
ブルマ、それは前世でも旧時代の遺物でAVやエロゲ等々とフィクションの中しか存在しなくなった代物。
とはいえ前世では女の子の体操着がブルマしかなかった時代に学生だったのだ、それにブルマフェチという訳でもなく。
(ゆらぎの体操着がブルマになった所で、他の女子達も同じならスルーしてもいいかな? 別にゆらぎが変態化する訳でもなし)
もしかすると、久しぶりにゆっくり出来る時間なのかもしれないとすら。
しかして、彼女達がそんな彼の思考を読めるはずがなく。
「ねーねー、黙ってないで教えてよ~~。気ーにーなーるぅ、氷里くんは何でブルマが好きじゃないの??」
「俺も気になる」
「ウチもウチも、男の子ってこういうの好きなんじゃないの??」
「そんなに気になるの?? ブルマに興奮しないこと如きで??」
三人の視線だけじゃなく、教室に居た全員の視線に晒されて真玄は非常に困惑した。
前世で若いときに身近な存在だった、とは言えないし。
何か、他に納得させられそうな答えはなかっただろうか。
(僕としても確かにブルマはエロいって思うけど…………あっ)
見つけた、とても大事な理由があったと彼は真剣な顔をした。
前世から変わらぬ性癖、しかして優等生であるならば外に出すべきではないと封印していた性癖。
シチュエーションによっては、ブルマがアクセントになるその性癖とは。
「……そうだな、僕としてもブルマの貴重性、エロスは理解するよ。でもさ、――見たいなら普通に買ってきてさ、土下座してでも恋人とか仲のいい子に着て貰えばいいじゃん。騒ぐほどかなぁ……って感じ?」
「ぐっはぁッッッ!! せ、正論はやめろ真玄おおおおおおおおおおおお!!! それは人が死ぬぞ!! ツラと頭と性格がよくて実は料理も上手なお前だから言えるコトだぞ!!! 普通は頼めるような子がいないんだぞ!!」
「素丸? 君が言えたコトかな? 後ろ見てごらん??」
「え、オレ!? いったい――――ッッッ、なんでぇ!?」
「許せねぇよなぁ」「素丸、アウトー!」「パルパルパル」「自分が恵まれてると気づかないヤツめ!!」「非モテだと思ってるモテ男なんて粛正してやる!!」
素丸が後ろを向くと、数々の男子が睨んで腕組みをしている。
さぁいっちょボコるか、と言わんばかりの勢いであったが。
「待って、待ちな、――こいつはうちがボコる、責任をもってコロス、ニブチンはお仕置きだぁッッッ!!!」
「どうしてだよ護士木!? どうしてそっちに回るんだよぉ!? 助けて真玄!! 話題を変えてくれっ! ほら、他にもブルマに興奮しない理由あるだろ!!」
素丸の必死な姿もあって、真玄は頷いた。
まだ、語っていない事があったからだ。
「まぁこっちの理由が本命なんだけどさ」
「あ、他にもあるんだ、是非とも教えてくださいプリーズっ!! 氷里くんがブルマに興奮しない理由とは!! さん、はい!!」
「なんでそんなテンション高いのゆらぎ?? いいけどさ、――――こほん、ま、ブルマって事は想像して見て欲しいんだ、シチュエーションとしては体育の時間ってコトじゃん?」
「まあ、そうなりますねぇ」
「ならさ、運動後、或いは運動中って可能性が高い」
「それがどうなるんです??」
ゆらぎは首を傾げる、すると銀髪も一緒に揺れる。
それを真玄はしみじみと見て、そんな彼の姿を見た素丸達はなんとなく察すると共に。
優等生である彼も“こだわり”を持つ、普通の男なんだと理解した。
「ブルマそのものには興奮しない、けど――――、運動のためのポニーテール姿ッッッ!! そして汗ばんだ首筋、うなじ!!! それこそがエロス!! 服装の違いがエロスじゃない、長い髪の子が普段は見せない首筋を晒し、かつ健康的に汗をかいて濡れた肌ッッッ!! これこそがエロス!! あえて言おう…………全裸よりセックス!! セェェェェェェェェェェェェックス!!!」
その力説に聞いていた全員が静まりかえった、真玄が壊れたと心配すらしたのであった。
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