第20話「エロゲメインヒロインの素質」
教室は謎の緊迫感に支配されていた。
所々風変わりな面を見せるが常識人のイケメン優等生のセクハラと、自分を陰キャで目立たないモブだと思ってる節がある性知識に疎い銀髪巨乳美少女のバカエロ対決。
いったいどうなるのか、素丸と継奈を筆頭にクラスメイト達はハラハラドキドキで見守っていて。
(――――狙うはおっぱい……否、乳首、そして……股間だ)
真玄、電マを正眼に構える。
(な、なんかスゴく怖くなって来たんですが!? というか構えが堂に入ってません?? え、もしや氷里くん剣道経験者とか!?)
ゆらぎ、電マを上段に構える。
(僕は素人、だけど僕は――(主に悪い)設定が盛りに盛られた(陵辱)エロゲ主人公なんだ!! ゆらぎには絶対に勝てる……そういう因果なんだ!! でも……万が一の為に言葉も使う……油断はしないよ)
真玄、摺り足でフェイントを一度。
(ううっ、氷里くんがこんなヘンなコトをしでかすってコトは、きっとこのマッサージ器って私が知らないエッチな使い方があるんだろうけど……、つまりそれって、負けたらそうされるっていうか、今この瞬間にも狙ってきてるッッッ!?)
完全に腰が引けたゆらぎは、思わず一歩下がってしまう。
それを見逃す真玄ではない、彼は考えるより早く。
「貰ったッ――」
「――ジャスガ!! よしッ、ジャスガ成功!! っていうかドコ狙ってるんですか氷里くん!?」
「へぇ、ならこれでどうだ!!」
「ジャスガ!! ジャスガジャスガジャスガッッッ!!」
「ガードばっかりじゃ勝てないよ、それとも僕の油断を誘ってるのかな?」
「ガードするので手一杯なんですよ!! というか胸とスカートばっかり狙わないでくださいよ!!」
「――――なるほど、じゃあ何で僕がそこを狙うか言ってみてよ」
「そ、それは……」
ゆらぎは言いよどんだ、言えない、恥ずかしくてとても言えたもんじゃない。
だから。
「わっ、私が可愛いから虐めたい!! そうでしょ!! もう氷里くんったら小学生みたいなんですから!!」
逃げた、真っ赤な顔で半笑いになって答えを知っていると誰もが分かったが。
「それもある。君は容姿に対する自己評価が低めだけど、僕は……君がとても素敵な女の子だって、(メインヒロインだし)世界一可愛いって知ってるから。男としてそういう気が少しでも存在したって否定しないよ」
「ッッッ!? な、何を言い出すんですか氷里くん!? こ、こんな皆の前でぇ!! もおおおおおおおおおっ、恥ずかしッ、恥ずかしすぎて死んじゃいそう!!! 」
「それから――君(に殺されない未来)の為に、少しでも正しい知識を身につけて欲しいから……」
「ううっ、き、気持ちは嬉しいです、嬉しいですよ? でも、でもですね…………その、できれば二人っきりでと言いますか、家でもいいんじゃないかなーって、氷里くんがどうしてもって言うなら、そ、その……抵抗しませんけど、……………………責任、とってくれますか?」
「う、うん??」
「い、言ったぞ!?」「流石は氷里だ!」「即答するなんてスゴいぜ真玄!!」「ゆらぎ愛されてるぅ!」「あー、アタシも即答されてみたい」「これは結婚祝いを用意すべき??」
あれ、流れかわったな? と真玄は冷や汗をかいた。
どうしてか分からないが、ゆらぎは照れながら喜んでおりウェルカム状態。
そして周囲も祝福ムード。
(クソッッッ、どうしてこうなってるんだよ!? これがシナリオの修正力……世界の選択だっていうのか!? 僕とゆらぎを……強制的に恋人にさせようって、運命からは逃れられないのか!?)
真玄としては恐怖しかない、ゆらぎが己に恋心を持っている事を理解していても。
その己が言った言葉が、どういった印象を相手と周囲に与えているか理解していない。
優等生・氷里真玄、彼の欠点のひとつはゆらぎが関わる事だけIQ2のバカになる事である。
(――ま、待てッッッ、落ち着け僕!! これこそが作戦かもしれない!! 変な雰囲気にして僕に一発入れる……ゆらぎ程のゲーマーならあり得る!! ――――けど、本当に??)
真玄は別の可能性もある、と電マを油断なく強く握った。
仮に彼女が電マのえっちな使い方を理解していた場合、公衆の面前でドセクハラしようとした真玄を許さないだろう、最終的に殺してしまうだろう。
しかし、もしこれが駆け引きだったとしたら?
(…………結果的にセクハラマンになってしまった僕の罪を許す代わりに……、何かを要求している、それを押し通す為に周囲の空気を変えた!?)
(ううっ、氷里くんが凄く真剣な顔でわ、私を見て……、もしや何かを求めてる!? 求めてるんです!? 愛の証としてキスとかそういうコトぉ!?)
(ッッッ!? ゆらぎがモジモジと恥ずかしがっている!? こ、これは催促されてる、僕が何を差し出すか催促されてる可能性あるよねぇ!?)
危なかった、このパーフェクトイケメンボディじゃなかったら彼女の変化を見逃していたと彼は思ったが。
当然の如く、盛大なる勘違いである。
らぶらぶモードに入った色白な銀髪巨乳美少女は、皆の前でキスなんて……と葛藤しているだけで。
「――――僕の負けだ、三日、三日待っていて欲しい。腕のいい整体屋を見つけてマッサージの腕を磨いてくるから、それで勘弁して欲しい」
「ふぇっ!? え、えっと??」
「君の為に頑張るよ……だから少しの間だけ、待っていて欲しい」
「はい……??」
「ヨシッ、じゃあ善は急げだ!! ゆらぎの為に僕はマッサージ技術を身につけてくるよ!! 先生には未来の為に数日休むって言っておいて!!」
そう言うと、真玄は教室を飛び出して。
ゆらぎ達はそれを、ぽかーんとした顔で思わず見送ってしまった。
「…………何というか、氷里くんって妙な所でおバカになるというか、ぴゅあっぴゅあでコッチが恥ずかしくなると言いますか、そういう所ありますよね」
「確かに、このクラスどころかオレの知ってる限り学校で一番ピュアなのが真玄だと思う」
「ウチも同意する、そこが氷里くんのいい所でもあるんだけども……ね?」
クラスメイト達は、全会一致で真玄を純真な男だと認定したのであった。
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