第51話
「二人とも、鏡ちゃんに占ってもらったら? よく当たるんだよ! 『自分に本当に大切なもの』のヒントがもらえるかも」
鏡ちゃんの占いの館の前に立つ。
看板には「Veritas」の文字。
三倍速そうな組み合わせのオレンジバーミリオンとルージュの赤いドア。
なんとなくだがシンパシーを感じる。
さっきの点灯式の発言といい、僕と趣味が似ているかもしれない。
中に入ると結構広い。
天井には大きな赤いシャンデリアがつりさげられているが薄暗い。
奥のほうに大きなテーブルがあり、鏡ちゃんが魔女のようなフード付きのマントを着て座っていた。
テーブルの上には大きなボール状の水晶や、タロットカードなどが載っている。
鏡ちゃんの後ろには大きな棚があり、何語だかわからない分厚い本や、占いの道具とみられる何かがいろいろ置いてある。
そしてルージュの水晶の隣には、赤い彗星のフィギアが。そうは言ってもジオン派か……僕と一緒だ。
「ちょうどお客様が途切れたところだったの。どうぞ座って」
鏡ちゃんがアンティーク調のイスを勧めてくれた。
「僕たち、占いなんて初めてで……」
僕がまず、鏡ちゃんの前に座った。
「占いを信じるか信じないかは、あなた次第。そもそも占いは一つのアドバイスだから。人生相談だから。与えられたものの中で、最大限に考えて生き延びるんだな」
鏡ちゃんが水晶玉に両手をかざしながら、なにかを唱え始める。
「認めたくないものだな、若さゆえのあやまちというものを……でも大丈夫。まだ間に合う。何事も遅すぎるということはない」
「あなたは、雑魚(ザコ)とは違うのだよ! 雑魚とは! 自信を持って!」
次に航志が鏡ちゃんの前に座った。鏡ちゃんはタロットカードを取り出した。
一枚づつめくっていく。
「湖底を歩く野ブタのカード……それでも男ですか、軟弱もの!」
「あえて言おう、カスであると」
「こういうときは、臆病でちょうどいいのよね~」
「チャンスは最大限に生かす。それが私の主義」
やっぱり……いろんな意味で鏡ちゃんとは気が合いそうだ。
「航志どの……寒い時代だとは思わんか? 野垂れ死にたくなきゃ、もう少しじっくり占って、今後の身の振り方考えたほうがいいかも」
鏡ちゃんがため息交じりに言う。
「ハイ……お願いします」
少し白っぽくなった航志が言った。
「まだ数時間かかるから、葵鈴ちゃんたちはほかのお店見てきたほうがいいかも」
「宙弥、今までゴメンな。許してもらえないほどひどいことしたと思うけど、ゴメンな。ゲンジツに戻れたら金は必ず返すからな……」
航志が厳かに謝った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます