第47話
鏡ちゃんのお店の隣が信介さんのお店で、少し広めの文房具屋だった。
ただしのりやはさみなどはあまり種類がなく、店内のほとんどを占めていたのは、色とりどりの折紙だった。
和紙があるかと思えば、ホログラムや宇宙の模様の折紙もある。
「わいの実家は、大阪で代々紙の卸問屋をしててな。ゲンジツの世界では兄ちゃんが店を継いでわいはほかの仕事をしてたんや。けど、エルピス島にきてみたらわいが紙を取り扱うことになってな、人間どうなるかわからないもんや」
様々な紙で、恐竜やら動物やらを作る作業はおもしろかった。
まずは折紙の折り方をきっちりと頭に叩き込む。そして祈るような気持ちで折る。
信介さん曰く、命を目覚めさせるように折る。
そして最後に信介さんに教えてもらった不思議な呪文をつぶやく。
すると小さな折紙が、人が乗れるような大きさの動物になって動き出す。
航志は細かい作業に興味はないのかすぐに折紙からは離れ、葵鈴と一緒に子供たちを動物にのせたり、危なくないように声をかけたりする仕事をしている。
僕は最初は幼児が作るようなシンプルな折紙しか作れなかったが、次第に精巧なものも作れるようになった。
信介さんやピエロ兄さんは念とやらを送ることで、折紙に一切触れることなく、これが折紙だろうかというような見事な動物や恐竜などを生み出していた。
折紙の動物たちは見かけこそ獰猛なものも多かったが、乗りやすいように体を傾けてくれたり合図でちゃんと動きを止める、優しい動物たちだった。
「乗るのは、できるだけ私たちの目が届く場所だけにしてるの。乗せてあげる時にしっかり伝えてね」
葵鈴が言った。
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