第48話

「今日のバイトはこれで終わりや。フェスが終わるまでまだ一時間あるから、遊んでから帰ってきたらええ。これ今日のバイト代」


 コインを渡しながら、信介さんが言った。


 ビーチ沿いには、小さな子供の思いつきなのではないかというようなヘンテコな店がたくさんあった。


「涼しい風を呼んでくれる風車屋」


「スポーツが得意になる下駄屋」(あっ! さっき航志と戦った時の‼)、


「本当に死んだ人が出てくるお化け屋敷」(全員本物)、


「自分の大好きなものや大嫌いなものが時々映るミラーハウス」などなどだ。


「海鮮料理を出してくれるレストラン」の店頭では、大きくなるかき氷(イチゴ味)、小さくなるかき氷(レモン味)、海に潜ってもくるしくないかき氷(ブルーハワイ)、などが売っていた。


「パン屋さんやおもちゃ屋さんは、リベロビーチのほうにあるの。あっちも屋台出てるかも……」


「あっ‼ これ! さっきのテディベア?」


 お面屋の前で僕は立ち止まった。いろんなお面が置いてある。


 最初に葵鈴がかぶっていたテディベア、猫、犬、タヌキ、宇宙人みたいなものまである。


「お面の効果は一時間だけ。一時間経つと元に戻る。顔だけか全身か選べる。顔も体も性別さえも、お面着ければ変えられる。パンダやカエルや鳥にもなれちゃう。そのお面次第で、いろんなルックスや動物になれるから、かっこいいとかかわいいとかには、この島の人はあまり興味がないの。ハートのほうが大切……ってハートも変えられるお店もあったんだった」


 隣のお店をちょっと見て言う。


 お菓子屋さんみたいだ。


 店頭で何か売っている。

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