第46話

「そろそろ行こうか」


 星羅さんのプレイとビートの巧みすぎるダンスにくぎ付けだった僕に、葵鈴が声をかけた。


 鏡ちゃんや信介さんも一緒に歩く。


 航志もついてくる。


 ビートも踊りながらついてくる。


「じゃ、私はエルピス島の母、してくる! よかったらあとで遊びにきて!」


 鏡ちゃんが全体がオレンジバーミリオンで窓枠がルージュのドアを開け、入っていった。


 十歳にして母とは……。


 葵鈴といい、星羅さんといい、なんだか頼もしい女の子が多い島だな。


「どっちが早いか競争だ!」


 突然、背後から何かに襲われた。


 これは……和紙のティラノサウルス? 


 浴衣を着た小さな子供たちが、ティラノサウルスやらステゴサウルスに乗って遊んでいる。


 そばにはハッピーを着たピエロ顔のお兄さんが、和紙の紙に何やら念じている。


 しばらくすると和紙はひとりでに折りたたまれ巨大化し、プテラノドンになった。


 そして子供を乗せて悠々と飛んで行った。


  ……夢? 夢の中で夢見てる?


「わいの店ではクリスマス期間中だけ、乗り物を売ってるんや」


「乗り物? 和紙性? 強度大丈夫なんですか?」


「だいじょーぶや。今まで一度も事故はない」


 信介さんが胸を張る。


「和紙だけど水にも火にも強いの。でも乗り物の効果があるのは一時間だけ。一時間超えると、動きが止まってしまう」


「自分らには、ここで乗り物屋を手伝ってもらう」


「『自分に本当に大切なもの』が見つかるかもしれないしね」


 葵鈴がかわいくウインクした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る