第39話

 同じクラスの鈴木航(こう)志(し)が立っていた。大柄でつりあがった眼。


 腕の太さは多分校内一だろう。


 僕を裏庭に呼び出しては殴ったり、クラス全員に僕を無視するよう仕向けたり、とにかく陰湿なヤツだった。


 なんでこんなところにまでいるんだよ……。


 危険を察知して、僕は葵鈴を僕の背後に隠した。そして小さな声で言った。


「こいつは危険なんだ。葵鈴、逃げて」


 葵鈴は恐ろしすぎて動けないのか、逃げようとしない。


「あれ? かわいいの連れてるじゃん。誰?」


 航志が僕に近づきながら、ニヤニヤして言った。


「この子には、手を出さないで。お願いだから」


 心臓の音が速くなるのがわかる。


 声が震える。


 怖い。


「オレ、女泣かすの好きなんだよね~。一部の女子には女泣かせのコウシなんて言われてんの」


「この子に少しでも触れたら、許さない!」


 いつもの僕だったら、航志にはとてもこんなことは言えない。


 何も言わずにお金を渡して、頭は両手で守りながら、顔やお腹に何発か殴られるのを我慢するだけだ。でも。


 今日は葵鈴を守らなきゃならない。なんとしてでも。

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