第35話
「この額縁は何年も前からここにあるの。毎日絵が変わる。写真のときもある。麦畑の上をカラスの群が飛んでいる絵があるなと思ったら、次の日は妖怪たちが行進してたり、池に浮かぶ睡蓮の絵のこともある。タイムズスクエアの前で看護婦と水兵さんが熱烈なキスを交わしている写真とか、トレンチコートの男二人と仲良く手を繋いでいる宇宙人の写真のこともある」
「わあっ……見てみたい」
絵も写真も大好きだ。
時代や場所を越えて、いろんなところに連れて行ってくれるから。
いろんな人の人生を感じさせてくれるから。
特に好きなのは、辛いことも悲しいことも忘れさせてくれるような、吹っ飛ばしてくれるような、強烈な個性と世界観を持った作品だった。
「絵の中にも入れる。ほら、あそこ」
葵鈴が絵の額縁の右下のほうに突き刺さった、木の看板のようなものを指さした。
あまり上手とは言えない消えかかった文字で「営業時間は九時から五時まで」と書いてある。図書館みたいだと思った。
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