第28話

「じゃあ食べ終わってすぐで悪いけど、お手伝いお願いしてもいいかな」

 信介さんがココナッツの実を片付けながら言った。


「ツリーの飾りつけだね」

 葵鈴が信介さんからココナッツの実を受け取りながら言う。


「飾りは倉庫にあるから、これ鍵」

 信介さんから僕は、鍵を受け取った。


「もしかして、出口の鍵、ゲット?」

 僕は葵鈴に聞いた。


「これは単なる倉庫の鍵だから! 出口の鍵は光ってるから!」

 葵鈴はあきれたように言った。


「こんなに簡単に手に入るわけないよね……」

 僕と葵鈴は木でできたごみ箱にココナッツの実を捨て、ツリーに向かった。


「信介さん、ケガ大丈夫かな……」


「う~ん。大丈夫だと思う。すごく優しい人だからね、いろいろ考えちゃうこともあるのかもしれない」


「そういえば今日は、何月何日?」

 一応聞いてみた。


「ええと……十二月二十四日の午後一時五分、だね」

 葵鈴がワンピースのポケットからアンティークの懐中時計を出して言った。


 僕がトラックに飛び込んだのは十二月二十五日の夕方五時ごろだから、この世界とは三十時間くらい時差があるらしい。


 って時差が二十四時間以上あるのはおかしい! 


 一体ここはどこなんだ? 


 僕は何をしに来たんだ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る