第26話

「えっ? そってソースのそじゃないの? これお好み焼きだし」


「確かに一見ソースなんだけど、ピーナッツ味噌を砕いたもの使ってるね。あ、マヨネーズ」


「さすがお兄ちゃん! まあ、ソースでも味噌でも、おいしければなんでもいいか!」


「これはせの“醤油”。でも大豆で作った日本の醤油じゃなくて、魚から作ったナンプラーだね」


「お醤油のハンバーグかあ!」


「ご飯の上にハンバーグが乗ってる場合は、ロコモコと言ったほうが正しいかも」


「これは“砂糖”かな?」


 生のパイナップルやマンゴーやパパイヤなどの南国の果物がたくさん入った、フルーツ白玉のようなものを食べて言った。


 暑い夏の日に、母がよく作ってくれたフルーツ白玉を思い出した。


 母は味に関しては結構冒険する人で、「サイダーの代わりにいいラムネが手に入ったから」と、ラムネで作ることもあった。このフルーツ白玉もほんのりラムネの味がした。


「そういえば、この子の名前はなんていうの?」


 自分と同じくらいの大きさのスイカを両手で持ち、口いっぱいに頬張りながら、もぐもぐと口を動かしている猫猿を見ながら言った。



「ビートだよ。音楽が鳴るとノリノリで踊っちゃうから。セイラさんが回している時とか、すごいんだよ。野生の血が騒ぐんだと思う」


 葵鈴が飲んでいたジュースを置いたかと思うと、突然ドラムのような口真似をした。


 ヒューマンビートボックスというやつだろうか。するとビートはかじりかけのスイカを持ちながら、短い手足を器用に動かし踊り、最後はくるっと一回転して特撮ヒーローばりにポーズを決めた。


 そして何食わぬ顔でまたスイカを食べ始めた。ちっこいくせになかなかやるな……。


「サ、サルでも音楽がわかるんだね」


「今日は全体的にアジアンテイストだったなあ。和食のときもあるんだけど」


 葵鈴がお腹を叩きながら言った。


 僕もお腹がいっぱいになって、ゆったりとした気持ちになった。


 足元を温かい波が撫でていく。 なんだかまた眠くなってきた。

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