第25話

 ココナッツの実を、信介さんが小さな斧のようなもので開いていく。


 大きな五つの実の中には、色とりどりの様々な食べ物が入っていた。


 みんなで少しづつお皿にとって食べてみる。


「宙弥くん、食べてどの味か、試しに当ててみ」


 信介さんが僕に言った。


 葵鈴にも信介さんにも聞きたいことは山ほどあったが、まずは食べてからにしよう。


 食べておいしいかどうかの感想を言うのではなく、味を当てるなんてちょっとおもしろいなと思った。


 味覚を研ぎ澄ませる。朝食や夕食は自分で作ることもあるから、調味料の知識は少しある。


 どの料理もアジアンテイストの味付けになっており、一つの調味料ではなく複雑な味が絡み合って、小さなハーモニーを作り出していた。


「これはしの“塩”かな?」


 大エビとイカのガーリックバター炒めを指して言った。


 うまみ豊かな塩で炒められた大きなエビは半生で、ぷりぷりと口の中で弾ける。肉厚の柔らかいイカも、下の上でとろけるようだ。


「これは簡単。“酢”だね。ただしお酢だけじゃなくてレモンも絞ってある」


 春雨に鳥のもも肉を切ったものや、トマトが入った具だくさんのサラダだった。


 トマトは驚くほど新鮮で、甘かった。


「これは “味噌”のそ」


 豚バラ肉やアボガドの入った生地の上に、半熟の目玉焼きがのった料理だ。こんなにジューシーでおいしい豚肉は、初めて食べたかもしれない。

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