第11話

「わあああああっ!」

 急に視界が開けた……と思ったら、ハデな水しぶきをあげて水の中に落ちた。


 水……どうして?

 僕は道路にいたんだよな?

 泳げないのに……。


 苦しいかもしれないけど、この際溺死でもいいかと思ったら、水は腰までしかなかった。


 見渡すと、遠浅の美しいエメラルドグリーンの海に囲まれている。


 宝石のようにキラキラと輝く太陽。

 コバルトブルーの空には、真っ白な入道雲。

 冷たい雪が降るクリスマスの夜から、このギャップはなんなのか。


 夢なのか天国か……でも僕、今まで特にいいことしてないしな……っていうか事故とはいえ人殺しだし。


 温かい風が、全身を優しく包み込んだ。冷え切って凍えそうだった身体を、少しづつ溶かしていく。


 唇に着いた水を少し舐めると、しょっぱい。

海岸に歩いていき、水を吸ってぐっしょりと重い分厚いダウンコートや、セーターを脱ぎ捨てた。靴下も靴も脱ぎ、古ぼけたトランクス一枚になる。


 パールがかった珊瑚色の砂浜には、鮮やかなタンポポ色の小さなカニが、まるで海を眺めているかのように佇んでいた。


 黄色いカニ? 

 そんなもの存在するのだろうか?

 よく見るとカラダが半透明で、内蔵が少し透けて見える。トクトクと動いているのは心臓だろうか?


 タンポポ色は大好きな色だ。


 色言葉は冒険・明るさ・好奇心。


 見ていると元気が湧いてくる色。


 どこかに連れて行ってくれそうな色。


 

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