第10話
キキ―ッ‼
トラックが急ブレーキを踏んだ。
運転していたのは、黒ひげのサンタではなく普通のおじさんだった。
走行速度が速ければ速いほど、車体が重ければ重いほど、すぐには止まらない慣性の法則はやはり有効で、でももう理科の授業を受けることもないんだろうなと思った。
いじめられてたときにも味わったことのない衝撃が、串刺しのように身体全体を貫き、身体が高く高く宙に浮かんだ。
高所恐怖症のはずなのに、不思議と今日は怖くない。
ラーメン屋の前のクリスマスツリーが、キラキラと瞬くのが見えた。
このまま死ぬんだな……これが葵鈴への最大の供養になることを願う。
意識が遠くなる。そのときなぜか、あの声が聞こえてきた。
「おにーちゃん……タスケテ」
僕ははっとした。
忘れたことのなかった、あの日僕が殺した、葵鈴の声だった。
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