第6話
葵鈴の死は、事故として処理されたらしい。
クリスマスが葵鈴の命日になった。
ゴム風船は、飲み込んでもお尻から出てくることが多いみたいなんだけど、たまたま喉に張り付いて気道を塞いでしまったらしい。
きっとすごくすごく苦しかっただろうな……病院の先生はこれは事故だし気にすることないと言ってくれたけど、さっきまで笑いながら一緒にツリーの飾りつけをしていた大好きな葵鈴にもう二度と会えないなんて、全然信じられなかった。
お薬を飲んで少し病院で寝たら、生き返るんじゃないかと思って先生に一生懸命お願いしたけど、先生は困ったように首を振るばかりだった。
毎日毎日、朝起きた時や夜寝る前に、葵鈴が帰ってきますようにって、神様にお願いした。
でも葵鈴は帰ってこなかった。
僕の心の中で、
「おにーちゃん、おにーちゃん」
って言いながら抱きついてきたり、くちゃっとしたかわいい笑顔を見せてくれるだけだった。
葵鈴が亡くなり、僕ら家族の生活は一変した。
父は辛いことから逃げるように仕事に打ち込んだ。今まで以上に帰りが遅くなり、土日に仕事が入ることもしばしばだった。
葵鈴がいたころは週末になると海や動物園などに四人でよく行ったものだったが、そういったことはなくなった。
そもそも家族の会話がほとんどなくなった。夜中たまに聞こえてくるのは
「あなたがしっかり子供たちを見ていないから!」
「仕事してたんだよ! そもそも倒れやすいツリーを部屋の中に入れたのは誰だよ!」
などといった父母の罵り合う言葉や、葵鈴のお葬式にかかるお金の話などだった。
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