第37話 何かやりました⁉
「ありがとうございました!」
お店に来てくれたお客さんにそう言うと、お客さんは会釈をしてお店から出ていく。
クンツァイトからかえって数日、わたしは仕入れた本をお店に並べて通常通りの業務をこなしていた。
お店を始めてそれなりに時間がたって少しづつではあるけどお客さんが増えてきた。
特に魔導書はさすがに無理だけど魔法書をお店に並べるようになってからは冒険者の人が良くお店に来てくれるようになった。
もちろんシュロさんやアルメリアさんもたびたび来店して買い物したり最近あったことを話したりしている。
今日もこの後来るって言ってたな。
カランカラン
あ!来たかな?
「いらっしゃ・・・」
「ここはカルミアというものの店で間違いないか?」
お店に響いてきたのはシュロさんの声よりも低く重い声。
あれ?人違いだった?
よくみるとお店に入ってきたのは甲冑を着た男の人だった。
どこかの騎士団の人かな?でもなんで?
「あ、はい。カルミアはわたしで、ここはわたしの店ですが。あの何かありましたでしょうか?」
男性は腰のポーチから手紙を取り出した。
「私はジェダイト領領主ルドベキア様に仕える騎士団のものだ。本日はルドベキア様から手紙を預かっている」
・・・へぁ?・・・え⁉領主⁉
ジェダイト領はこのベリル村やこの間行ったクンツァイトなどを含めたこのあたり一帯のことを指す。
え⁉わたしなにかやった⁉
「領主様がいったいどのような用件で?」
騎士さんは表情一つ変えずに答える。
「詳しいことは聞かされていない。私に与えられた任務はこの手紙を貴殿に届けることだけだからな」
混乱しながらもひとまず手紙を受け取る。
「では、私は別の任務があるためここで失礼する」
騎士さんは敬礼をしてお店から出ていく。
騎士さんが出ていくのを見た後「ふー」と息を吐く。いったん落ち着こう。
領主から手紙だなんていたずらかなんかじゃないの?
試しに紙を調べてみる。お願い!何かのいたずらであって!
≪魔法紙≫:魔法が込められた紙
書かれたものを特定の対象しか見ることができない
防炎、防水、防虫の特性を持つ
主に貴族が重要事項を伝える際に使われる
・・・本物っぽいな。
おとなしくしっかりと閉じられた封を開く。
中には手紙が一枚入っていた。
『ベリル村 カルミア殿。貴殿が私の商品を運搬する商人を手助けしてくれたという件やフェンリル相手に戦い抜いたという話を耳にした。そこで、その実力をかい貴殿に依頼したいことがある。ついては貴殿を私の屋敷に招待したいと考えている。明後日、迎えのものをそちらに送る。招待に応じてくれる場合は迎えのものに伝えてくれ。良い返事を期待している。ジェダイト領領主 ルドベキア=ジェダイト』
ど、う、や、ら、なにかやらかしたってわけじゃないみたいだね。よかった~~~。
でもそうなると依頼したいことって何だろう?
そもそも領主様についてあまり知らないんだよね。
カランカラン
「よ!来たぞ!」
「元気にしてた?」
ちょうどそこにシュロさんとアルメリアさんがやってきた。
「ん?どうした?なんか困った顔をしているぞ?」
「なにかあったの?」
そうだ!二人に聞いてみよう!
「実は・・・」
わたしは二人に訳を話し始めた。
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