第36話 祝い再び
ん、んん
「あ!目が覚めたのね!」
カンナさんがわたしの顔を覗き込んでくる。
どうやらいつの間にか眠っていたみたい。
「すみません」
「今日の主役は嬢ちゃんなんだから気にすんな。さ、それじゃあ始めようか!」
わたしは二人にお店の二階にあるラークスパーさんの今日中スペースに連れられた。
そこにはたくさんの食材が並べられている。
「見て!この鉄板!わたしが作ったもので食材のうまみを引き立たせつつ煙が出るのを抑え、なおかつ汚れが勝手に落ちてくれる優れものよ!」
カンナさんは熱烈に自分の作品を解説してくれる。
回復薬から料理用の鉄板まで本当にいろいろと作れてすごいな。
「カンナの自慢話はそこまでにして、さ、好きなだけ焼いて取って食べろ!」
さすがにお肉は昨日も結構食べたから今日は野菜を食べることが多かったけどそれでも楽しく食事をした。
途中で二人がお肉をめぐってまた言い争いをしていたりもしたけど。
「そういえば向こうの村で何があったんだ?」
「あ!それはわたしも気になっていたのよ!」
二人がそう言うのでわたしは村であったことを二人に説明した。
「まさかフェンリルだなんてね」
「ああ、よく無事だったな」
「村の人が助けてくれたんですよ。特に村長さんがすごく強くて」
「ほう、小さな村にそれほどの実力者が。いずれあってみたいな」
どうやらラークスパーさんはパキラさんに興味を持ったみたいだ。
「わたしの回復薬が役に立ったようでよかったわ!」
「まあお前が作ったものだしな」
珍しくラークスパーさんが直接カンナさんをほめるとカンナさんはからかうような視線をラークスパーさんに向けた。
「なぁに?珍しく素直じゃない」
「そういうすぐに調子に乗るところがなければな」
「なにをぉ。と言いたいところだけど今日はカルミアちゃんに免じて許してあげるわ」
あはは
二人には申し訳ないけど、二人の絡みを見ていると楽しくなってくる。
「それにしても、だ。たしかに気になるな。そのフェンリルの仲間を襲ったっていう魔法使いは」
「ええ。冒険者の間ではフェンリルにいたずらに挑むのはタブーとされているわ」
「それはどうしてなんですか?」
「嬢ちゃんが行った村のように、フェンリルに攻め込まれる可能性があるからだ」
冒険者がちょっかいをかけたせいで近くの村が襲われる可能性があるってことか。
今回は村の人たちの協力もあって何とかなったけど、一歩間違えれば全滅していても全くおかしくはなかった。
それを考えたらタブーにされるのも当たり前だ。
「それをその魔法使いが知ったうえでそんなことをしたのかはわからないけど少なくともほめられたことじゃないわね」
「ああ、何事もなければいいが」
・・・
「おっと!雰囲気が暗くなっちゃったわね!さ、楽しみましょう!」
「そうだな!さ、食べよう食べよう!」
そのあとはただただ楽しく一夜を明かした。
翌日、わたしは二人に見送られながらベリル村へと戻った。
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