第29話 どう戦おうか

 わたしがやるのは『製本』で新しい天稟を作り出すこと。

 前まではわたしの魔力が足りなくて気絶してしまうから魔力回復をし続けながらやるっていうかなり強引なやり方でやっていたけど、魔力が増えた今なら気絶するってことはないはず。

 それにいちおう今回も回復薬はあるから何とかなると思う。

 てわけでさっそく『製本』を使用する。

 魔力がどんどん減っていくのを感じる。

 それでも何とか意識を保ったまま魔導書を作ることができた。

 ちょっとふらつくけど何とかなってよかった。

 魔力は・・・ギリギリだなー。

 それでも気絶しなかったってことはわたしの魔力も少しづつ多くなっているってことだよね。

 さっそく作成した魔導書を開く。

 するとわたしの中に新しい力が宿るのを感じる。

 新しい天稟は『導き手』

  ①鼓舞:味方の能力を引き上げる

  ②奮起:味方の士気を高めそれに応じて自分の能力をあげる

の能力を持っている。

 フェンリルの能力を聞いて思ったんだよね。こっちも味方の能力を高めれば自営団の人でも戦うことができるんじゃないかなってね。

 もちろん自営団の人に戦いを強制するつもりはないからあくまで手段の一つなんだけどね。

 ひとまずこれはプランAとしておこう。

 もともとこれはわたしが引き受けた依頼なんだから、わたし一人で全部相手にするときのことも考えないと。

 まずフェンリルについてもう少し詳しく対策を考えよう。

  ≪フェンリル≫:風、水、氷を得意とする精霊獣

          味方の能力を引き上げる力を持つ

          体は巨大なオオカミのよう

          森の生物の統率者

 精霊獣?魔物とは何か違うのかな?

  ≪精霊獣≫:魔王に仕えていない一部の魔物を指す

        その体は魔力で構成されており、明確な実体を持たない

        それぞれが独自の支配領域を持っているものが多い

        その多くは高い知能を有する

 ということはこの辺りはフェンリルの支配領域だったってことかな。

 だとしてもなんで今になって攻めてきたんだろう。

 今までもこの村は存在していたはずなのに攻め込んできたってことは何か理由があるのかな。

 知能が高いみたいだし、もしかしたら話し合いで何とかできたりは・・・しないかな

 というか弱点は⁉

  鋼、光、炎を苦手とする

 なるほどね。でも生半可な魔法じゃきかないだろうな。

 なによりフェンリル以外にも複数体魔物がいるって考えると・・・

 範囲攻撃を多用するのが一番かな~。

 一応プランBとしておくけど正直これは厳しいと思う。

 強くて素早い敵相手に意識を話すのは危険だからね。

「おーい!こっちの準備はできたよ!早くおいで!」 

 悩んでいるわたしのところへパキラさんが戻ってきた。

「おや?何か考え事かい?」

「ちょっとどうやって戦おうかなって」

 わたしがそう言うとパキラさんは「そのことなんだけど」と口を開いた。

「入っておいで!」

 パキラさんがそう言うと何人かの村の人が入ってきた。

 なんだろう?

 そう思っていたら、そのうちの一人男性が話し始めた。

「ぼくたちはあなたの回復薬のおかげで助かりました。そのお礼を言いたくて」

 そういうと全員揃って「ありがとうございます!」といった。

「い、いえ!気にしないでください!」

「そういうわけにはいきません!・・・そこでお願いがあるのですが」

 お願い?なんだろう?

「ぼくたちも一緒に戦わせてくれませんか?」

 え⁉

「いいん・・・ですか?」

「ここはぼくたちの村です。ほかの場所からわざわざ来てくださったあなたに村の命運をお任せして自分たちは何もしないなんてできません!」

 ほかの人たちの顔も見たけど、みんな真剣だ。

「この子たちもこういっているしさ。邪魔じゃなければお願いできないかな?」

「い、いえ!邪魔だなんてそんな!むしろすごくありがたいです!」

 わたしの返事にみんなはうれしそうな顔をした。

 これでプランAでいける。

「よろしくお願いします!みなさんの期待に答えられるようがんばります!」

「こっちこそよろしく!」

 わたしは男性と握手を交わした。

「さて、話もまとまったことだし、ご飯にしようか!」

 パキラさんはそう言って笑っていた。

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