第23話 村を助けに行きます

「お待たせしました!」

 わたしが門の前に行くと、すでにあの男の人は馬車を準備して待っていた。

「あ!お待ちしてました!ボロボロで申し訳ないんですがのってください。村まで案内します!」

 わたしは言われた通り場所に乗り込んだ。

 確かにあちこちに損壊が見えるけど私1人が乗っても床が抜けたりする様子はない。

「そういえばまだ名前を言っていませんでしたね。俺はアジェガっていいます」

「あ、わたしはカルミアです」

「カルミアさんですね。しっかりと捕まっていてください!」

 そういうとアジェガさんは一気に馬車を走らせた。

「うわ!」

 街に来る時とは違う荒々しく速さを重視した走りだ。

 ガタンッ!ガタンッ!

 車輪が小さい石をこえるたびに馬車が大きく揺れる。

 本当にしっかりと捕まっていなきゃ振り落とされてしまいそう。

 馬車から見える景色も目まぐるしい速度で変化する。

 これ壊れたりしないのかな?って思うくらいに早い。

 思わず「すごいですね」と言おうと思ったけど、アジェガさんの顔を見てそんな考えはなくなった。

 焦りと不安が伝わってくる表情だ。

 よくみたら小さく「無事でいてくれ」と呟いている。

 それもそのはずだ。アジェガさんにとっては自分の村の存亡がかかっているんだから。

 1秒でも早く村に帰りたい。みんなの無事を確認したい。

 その心境はわたしには想像のつかないほどのものだろう。

 わたしがしっかりとしなくては彼が守りたい人たちがみんな死んでしまう。

 そのことに緊張が走る。

 わたしはこれから自分が成し遂げなければならないことの重要性を再認識した。

 でも、やるしかない!

「見えてきました!あれが私の村です!」

 馬車を運転しながらわたしの方をみたアジェガさんは大きな声でそう言った。

 彼が指差す先には魔物からの攻撃の傷が伺えるくらいに損壊した家々が見える。

 まさかここまで酷いなんて。

 でもみたところ『危機察知』に村の中から魔物の反応はない。

 どこかに身を潜めて攻め入る機会を伺っているのかな。

 何はともあれ間に合ってよかった。

「今は村の中に魔物はいないみたいですね」

 わたしの言葉に彼は一瞬驚いたようだったけど、すぐに安堵の表情に変わった。

 アジェガさんは再び馬車を加速させ、わたしたちは村の中へと入った。

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