第22話 わたしがやります!

 あの男の人、いま勇者のことを探していた?

 必死の表情で叫ぶ男の人の周りに衛兵が集まってきた。

「なにがあったんですか?ほかの人たちが驚いているのでとにかく落ち着いてください」

 衛兵になだめられて男の人は少し落ち着きを取り戻したみたい。

「ああ、取り乱してすまん。でも、本当に急ぎの事態なんだ!俺の村が、俺の村が!」

 また落ち着きがなくなってきた。

「あなたの村に何があったんですか?」

「俺の村に魔物が襲ってきたんだ!そのせいで俺の村はもう壊滅状態だ!頼むこの街には勇者が来ているんだろ!お願いだ!俺の村を救ってくれ!」

「申し上げにくいのですが、勇者たちはすでにこの街を離れています」

 それを聞いた男の人は絶望的な表情を浮かべた。

「そ、そんな・・・じゃあこの街の衛兵は⁉」

 しかし、衛兵たちは言いにくそうな表情を浮かべる。

「・・・すみません。今は人が多くて私たちはすでに手一杯の状態でほかに人を回せる余裕がないんです」

「じゃ、じゃあ冒険者は⁉」

 そこに冒険者教会のスタッフが暗い顔をしてやってくる。

「申し訳ありません。魔物の群れとなると実力のある冒険者に依頼する内容となるんですが今現在冒険者の多くは別の場所に出ており、この街にいる冒険者は新人ばかりとなっております。もちろん依頼としてお受けすることはできますが、早くとも数日はかかるかと」

「そ、そんな。誰でもいい!俺の村を救ってくれ!」

 もう見ていられない。

「あ!あの」「俺が行こう!」

 え?ラークスパーさんが一歩前に出た。

「この塵滅と呼ばれたラークスパーに任せておけば!うっ!!」

 あれ?急に倒れちゃった。

「くそ。こんな時に腰が」

 ・・・

 ぎっくり腰みたい。

 気を取り直して。

「あの!わたしが行きます!」

 わたしが名乗り出たことを見た男の人は驚いた表情をした。

「本当か⁉本当に俺の村を救ってくれるのか⁉」

「はい!」

 男の人はしばらくの間泣きながらありがとうと言い続けた。

「よし、早速案内する。準備ができたら町の入り口まで来てくれ」

 男の人は「こうしちゃいられない」といって町の入り口に向かっていった。

 わたしも準備してすぐに向かおう。

「おい、カルミアの嬢ちゃん。本当に大丈夫なのか?」

 心配したラークスパーさんがそう言ってきた。

「たぶん大丈夫です。これでも冒険者の人にいろいろと教えてもらいましたから」

「しかし・・・いやもういまさらだな。ちょっと待ってろ。また回復薬とか準備してやる」

「その腰でどうしようってんだ」

「あ!カンナさん!」

「聞いたよ。本当に大丈夫なんだろうね、カルミアちゃん」

「はい!」

 わたしの返事を聞いたカンナさんはやれやれと首を振った。

「若いってすごいね。わかった回復薬はわたしが用意しよう。とっておきのをあげるよ」

「ありがとうございます!」

 とはいえ魔物の大群ってどれくらいなんだろう。

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