第21話 内緒にしないと

 ラークスパーさんに教えてもらったとおり、街中にはいろいろな商人がお店を出していた。

 さすが商業都市、食べ物から日用品、魔法具など様々なものが売りに出されている。

 行き交う人も多くてまるで一つのお祭りみたい!

 その時、一つの屋台のおばさんがわたしの方を見て大声を出した。

「そこのお嬢ちゃん!」

 わたし?

「それ以外に誰がいるのさ!ちょっとこっちにきな!」

 ?なんだろう?

 疑問に思いながら近づきいてみる。

「クンツァイトに来たからにはうちの海鮮焼きを食べていかないと!」

 そう言っておばさんは海鮮焼きをわたしに差し出した。

「あ、ありがとうございます」

「なに、若い子が遠慮にすんじゃないよ!さ、食べな食べな!」

 早速一口食べてみる。

 美味しい!タレで味付けされた白身魚が口の中でほろほろとして、噛めば噛むほど魚の旨みが出てくる。

「美味しいです!」

「そうだろう!さ、銅貨10枚だよ!」

 え?お金取るの⁉︎

「そりゃそうさ!こっちは商売なんだから」

 なんだか釈然としないな。

 そう思いながらも食べちゃったわけだし。仕方ない、のかな?お金を払おうとしたら。

「またお前はそんな商売をやってるのか!」

 白髪混じりの恰幅のいいおじさんがそう言いながら近づいてきた。

「げ、誰かと思えば串焼き屋じゃないか!またあたしの商売の邪魔をしにきたのかい?」

 知り合いみたい。でもあんまり仲良さそうには見えないな。

「お前がそんな詐欺まがいの商売をやってるのが悪いんだろ。お嬢ちゃんもこんな手に引っかかっちゃいけなよ」

「は、はい」

「ちょっと!その子からはまだ代金を!」

「また衛兵を呼ばれたいのか?」

 おじさんのその言葉におばさんは悔しそうな顔をしたけどそれ以上何か言ってはこなかった。

「あの、ありがとうございました!」

「なに、気にすんな。せっかくなんだから他のところも見て楽しんでいきな!」

 わたしはもう一度お礼を言うとお店を後にした。

 今度は騙されないように気をつけよう。

 さて、と言ってもどこから見ていこうかな。

 せっかくだし面白い本とか便利な魔法具とかないかな。

「『マジックアイテムワールド』?どんなお店なんだろう?」

「おや?いらっしゃい」

 お店のお兄さんがそう話しかけてきた。

「ここはどんなものが売っているんですか?」

「ここはいろいろな国や地域から集めた魔法具を売っているよ!よかったら見ていて!」

 お兄さんの言う通り、そこにはたくさんの魔法具が並んでいた。

 でもわたしの目に留まったのは一冊の本。もしかして。

「これって魔導書ですか?」

「よくわかったね!そうだよ、これは隣国で偶然手に入れたものなんだ」

 へー

「これって売り物なんですか?」

「まさか!これはただの飾りだよ!噂ではどこかの貴族が金貨三万枚で魔導書を購入したって話だけどね」

 金貨三万枚⁉

 わたしのような一般国民が一生涯で稼げる平均が金貨5枚程度って聞くけどそれよりもはるかに多い!

「す、すごいですね」

「ほんとにね。おかげで今は多くの商人が魔導書を求めているみたいなんだ」

 じゃあこの魔導書も高値で売れるんじゃ。

「いや、中には暗殺者を雇ってまで集めようとする人がいるみたいだからむやみに手を出すのは危険だよ。この魔導書もそろそろ片付けないとな」

 そんなことが・・・わたしが自分で魔導書を作れるってばれたらとんでもないことになりそう。

「お嬢ちゃんも魔導書に触れる機会があったら気を付けてね」

 あははは。自分でもわかるくらいひきつった笑みを浮かべてわたしはお店を後にした。

 『本好き』のことは絶対に秘密だね。

 そしてまたしばらく歩いていた時、なにやら大きな声が聞こえてきた。何だろう。

 きになって近づいてみた。

「勇者さまはいませんか!勇者さまはいませんか!」

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