第20話 開店祝いには
「おいおい気をつけろよ。お前ももう若くないんだから」
「うるさいわね!」
そう言ったあとカンナさんはわたしの方を見て手に持っていたものを手渡した。
「はいこれ」
これは・・・革表紙の本みたいだけどなんだろう?
「あの、これは一体?」
わたしの疑問にカンナさんはふふんと鼻を鳴らした。
「これはわたしが錬金術で作ったもの。そうね、名前をつけるなら『収納書』ね」
『収納書』?
「カルミアちゃんは冒険者が持ち物を収納しているポーチとかを見たことはある?」
「あ!あります!」
シュロさんが持っていたやつだよね。
「これはあれを本の形にしたものよ。さらに言うとしまえる量は一般のものの数十倍よ」
「え!そんなことできるんですか⁉︎」
「わたしはすごい錬金術師だからね!」
「ネーミングセンスはどうかと思うけどな」
「聞こえなーい。それで、どう?これ」
どうと言われてもすごいとしか。
あれって結構制作が大変な魔法具のはずなのに。
「そうじゃなくて!これはカルミアちゃんの能力で収納できる?」
あ、そういうこと!確かに見た目はもちろん中もページがあって言われなきゃただの本にしか見えない。
「やってみます」
わたしは『書庫』を使ってみた。
魔法具が淡い光に包まれてそして消えていった。
「どう?これは、成功?」
「はい。成功、したみたいです」
「いよっしゃあああーーー!!!」
すごい!本当にできた!というか魔導書といいこの天稟の本判定結構ルーズだな。
「すごいですよ!これは!」
「そうでしょう。そうでしょう。これはカルミアちゃんにあげるから好きに使って」
「はい・・・・え?い、いや!こんなたいそうなもの受け取れないですよ!」
だって冒険者が使っているポーチでも決して安くないのに。
「いいのよ!開店祝いがまだだったしね」
で、でも。さうがにこれを開店祝いとして受け取るのは。
「ありがたくもらっておきな。あって困るものでもないだろ。それにカンナは意地でも受け取らせるつもりみたいだぞ」
ラークスパーさんの言葉にカンナさんは「そういうこと」といった。
「そういうことなら。本当に、ありがとうございます」
わたしがそう言うとカンナさんは満足そうにうなずいた。
「そういえばあんたはカルミアちゃんの開店祝いに何かあげたの?」
「オレは回復薬をいくつかあげたな」
「え⁉そんなのあげたの⁉信じらんない!」
たしかに本屋さんを始める人に渡すものじゃないかな。
でも。
「ラークスパーさんがくれた回復薬。すごくありがたいですよ!」
「そうか?ならよかった」
「まあカルミアちゃんがいいならいいか。でも、もし不満があったらちゃんと言うのよ!」
「はい、ありがとうございます」
その時、ラークスパーさんが「そうそう」と何かを思い出したかのように話し始めた。
「ちょうど今、大きな商隊が街にやってきててな。本はもちろんいろいろな面白そうなものが売られているから行ってみるといい」
へー、そんなのがあるんだ。
「じゃあ、早速行ってきます。ありがとうございました!」
わたしは二人にそう言うと店を後にした。
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