第19話 仕入れ先のお店で

「あっ!見えてきましたよ!」

 行商人さんがそう言って指差す先にはクンツァイトの街が見えてきた。

 わたしは街の前で降ろしてもらうと行商人さんにお礼を言って街中を歩き始めた。

 確かこっちの方に。

 わたしがしばらく歩いていると、小さなお店が見えてきた。

 ついた。

 その時、お店の扉が開いて中から30代くらいの男の人が出てきた。

「ん?・・・あ!カルミアの嬢ちゃんじゃないか!」

「お久しぶりです、ラークスパーさん!」

 ラークスパーさんはわたしがお店を始める時に最初の本を仕入れるために訪れた本屋さん。

 クンツァイトは大きな商業都市なので新しい本が多く出回っているから仕入れにはピッタリ。

 尚且つラークスパーさんはわたしに位置からいろいろなことを教えてくれたんだよね。

「まぁこんなところで話すのもなんだ。中に入りな」

 わたしは手招きされてお店の中にはいった。

 お店の中は魔法具によって明るく照らされていてそこに本棚がいくつも並んでいる。

 わたしとラークスパーさんはカウンター近くの椅子に座った。

 わたしが座るのを確認したラークスパーさんは「それで」と話を切り出した。

「今日はどうしてこの街に来たんだ?」

「そろそろわたしのお店にも新刊を入れようと思いまして」

 わたしの言葉に「なるほどな」と感慨深そうに呟いてからまたわたしの方を見た。

「そうか、もうそんな時か。わかった、それでどんな本を入れたいんだ?」

 わたしは事前に考えておいたこう言う本が欲しいと言うことを伝えたあと、お店の中を見て何を仕入れたいのかを決めた。

「これらの本をお願いします」

「了解した。ちょっと待っててくれ」

 そう言ってラークスパーさんはお店の本棚を見て回ってわたしがお願いした本を持ってきてくれた。

「これでいいか?」

 わたしは早速確認してみる。

「はい、これでいいです!ありがとうございます!」

「なに、気にするな」

 わたしはお代を渡すと『書庫』に本を全部しまった。

「ほんと、便利だよな、その能力。オレも使えたらなあ」

 わたしがしまうのをみたラークスパーさんがそうもらした。

 たしかに本屋さんをするにあたってはすごく役に立つ能力だな。ただ本以外はしまえないんだけどね。

 その時、お店の扉が開く音がした。

「あんたはその馬鹿力でなんとかなるでしょ」

 そう言ってお店に入ってきたのは20歳くらいに見える綺麗な女の人。

「げ、カンナじゃねぇか」

 カンナさんはこの街で錬金術師をやっている人で、前にこの街に来た時に知り合った。

 前に来た時もラークスパーさんと言い争っていたっけ。

 でもなんだかそこまで嫌いあっているようには見えないんだよね。

 ちなみに若く見えるのは錬金術によるもので実際はラークスパーさんと同い年らしい。

「お久しぶりです、カンナさん」

 わたしがそう言うとカンナさんは笑顔でわたしの方を見た。

「ひさしぶりね!カルミアちゃん!元気にしてた?」

「はい!」

「それはよかった!」

 すると突然カンナさんは「あ!そういえば」と言った。

「カルミアちゃんに渡そうと思ってたものがあったんだった。ちょっと待っててね!」

 カンナさんはそう言い残して急いでお店から出て行った。

「まったく。いきなり来てなんなんだか。そう言うことみたいだから、まぁゆっくりしていきな」

「ありがとうございます」

 その時、ラークスパーさんが「あ!そういえば!」と口を開いた。

「この間勇者一行がこの街に来て、そこのフリージアって名前の剣士の女の子がうちに来たぞ」

 え⁉フリージア⁉

「いま、フリージアって言いました⁉」

「やっぱり知り合いなんだな。実は『カルミアって子が来ますか?』って聞かれて

オレは『そうだ』って言ったんだ。そしたら伝言を預かってな」

「それで、フリージアはなんて⁉」

「『私は元気にやっているよ。カルミアも元気でね』だそうだ」

 そっか、よかった。元気にやっているんだな。

「ありがとうございます」

「なに、オレは伝えただけだから気にすんな」

「それでもすごくうれしいです」

 わたしも頑張らないとな。

 そのときカンナさんが息を切らしながら戻ってきた。

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