第15話 わたしにできること
二人が出発して少ししたら、大きな音が鳴り響いた。
二人がオーガジェネラルと戦い始めたようだ。
わたしはすぐに『知識の楽園』で罠の解析を始める。
しかしこの壁にはいくつもの魔法がかけられていて今のわたしの魔法では壊すことも解除することもできそうにない。
いったいどうしたら・・・
『並列思考』も使って全力で頭を働かせる。
あれ?この壁・・・魔法石じゃない!てことはこれにかけられている魔法さえなんとかできれば。
わたしはさらに解析を進める。
どうやら罠を維持するためにはそれだけ多くの魔力が必要になるため定期的にかけられている魔法が弱まるタイミングがあるみたい。
そしてつぎそのタイミングが来るまで残りおよそ1時間。
その時に壁に攻撃を当てたらきっと壊すことができる。
でも、それまで二人が持つかどうかわからない。。
もちろん二人が負けるなんて信じたくない。でも、そう思わせるほどにオーガジェネラルという魔物は強い。それこそアルメリアさんが言っていたように国が討伐隊を組むほどに。
だからこそあの時二人はそれを覚悟していた。わたしを守るために。
だからといってみすみす見殺しにするなんてできない!
何か私にできることは・・・
「あ!あれを使えば」
わたしは『書庫』から何冊かの本を取り出す。
これは出発前に持ってきていたもので、魔法書という。
魔法書はその名の通り魔法が記録された本のこと。特徴は自分が使えない魔法でも使うことができるということ。ただ、高価だけど一度使ったら消えてしまううえに威力も本来のものよりもだいぶ劣ってしまうため、偶然仕入れることができたはいいけど売れ残っていた。ちなみに名前が魔導書と似ているからたびたびそれで詐欺が発生したりもするようだが、今そのことはどうでもいい。
今のわたしにとってはすごくありがたい。
これがあればみんなでここから脱出できるかもしれない。いそがないと!
わたしは二人が戦っている方向へと駆け出した。
しばらく走ると戦っている二人の姿が見えた。
二人が相対しているオーガジェネラルは3メートルはあるであろう赤く鎧をまとった巨体、頭部には二本の荒々しい角が生えている。
持っている武器は刀。それも持ち主の体と同じくとても大きい。
「『ラーグン』!」
「『トニトリグ』!」
アルメリアさんが大量の水を生み出しオーガジェネラルの周りを水浸しにしたところにシュロさんが雷の斬撃を複数回当てる。
それは弱い魔物はもちろんのことそうでない魔物であってもかなりのダメージ与えられるほどの威力を持った攻撃・・・のはずだ。だけど、攻撃を食らったオーガジェネラルは表情一つ変えない。
オーガジェネラルがにやりと笑った。
いけない!大技が来る!
それに気づいた二人はとっさに防御魔法を発動する。
そこにオーガジェネラルがさっきのお返しと言わんばかりに巨大な雷の斬撃を放つ。
アルメリアさんだけでなくシュロさんの魔力も合わさった防御魔法でさえも今にも壊れそうにきしみ始める。
わたしはいそいで二人のそばに駆け寄り、わたしの魔力も上乗せした。
ぎりぎりのところだったが、なんとか相手の攻撃を防ぐことができた。
「なんできたんだ!逃げろって言っただろ!」
「そうよ!ここは危ないから早く逃げて!」
わたしの存在に気づいた二人がそう怒ってきた。
幸いオーガジェネラルは今の一撃で終わらせるつもりだったのか、攻撃の反動でよろめいている。
「二人を置いて逃げれるわけないじゃないですか!」
「でも!」
わたしはアルメリアさんの言葉を遮る。
「わたしを心配してくれているのはすごくありがたいです。でも、わたしにとっても二人はもう大切な友達なんです。だから、わたしにも友達を守らせてください」
わたしの言葉に二人は言葉を詰まらせた。
「何とかなる見込みはあるのか?」
シュロさんが真剣な表情で聞いてくる。
「あと1時間ほどであの罠にかけられている魔法が弱まります。そこに魔法をたたきこめばおそらく」
「なるほど、あと1時間ね」
アルメリアさんの視線の先には態勢を整え始めたオーガジェネラルの姿がある。
その間どうやってあれの攻撃を防ぐのか考えているんだろう。
「わたしに一つ手があります。二人はそのすきに動きを封じてください」
わたしの言葉に二人は驚く。
「それは本当か?」
わたしは頷く。
二人は考えた後、顔を上げた。
「・・・わかった。ただし無理はするなよ」
「絶対よ!」
わたしは頷く。
持ってきていた回復薬を二人に渡した後、二人から少し離れた位置に移動した。
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