第14話 強大な反応

 そこからの攻略は割と順調だった。

 言っていた通り魔物はたくさん出てきたけれど、正直わたしはべつにいなくてもよかったんじゃないかなってくらい二人はさくさく進んでいった。

 わたしもシュロさんとアルメリアさんのサポートはあったけど少しづつ戦いに慣れてきた。連れて行かせてもらってよかったな。

「そろそろダンジョンの最深部につきそうだな」

「そうね。カルミアのおかげで順調だったね」

「いえいえそんなことないですよ。私こそお二人に助けられてばっかですよ」

 わたし一人だったらとっくに死んでいたと思う。

「そりゃ俺たちのほうが長く戦ってきたからな。先輩が後輩を助けるのはあたりまえだろ?それでもカルミアの飲み込みはすごかったぞ」

 アルメリアさんは「そうそう」と頷いた。

 そんなことを話しながら明るく歩いていた時、急に『危機察知』に反応があった。

 しかも今までのとは比べ物にならないくらいに大きな反応。

 なに・・・これ⁉

 思わず足がすくむ。

「あ、あの⁉」

 シュロさんも気づいたのかさっきまでとは違う緊迫した顔で口を開いた。

「この反応はやばい。ひとまずどんな魔物なのか確認をして、勝てそうなら戦うがおそらく難しいだろう。その場合戻ってほかの冒険者にも協力を仰ごう」

 わたしろアルメリアさんはそれに賛成してゆっくりと奥へと進んでいった。

「事前情報にはそんな魔物の存在はなかったはず。いったいどこから・・・」

 アルメリアさんのつぶやきがことの不思議さを物語っている。

 反応を『知識の楽園』で調べてみる。

  《オーガジェネラル》:オーガの上位種。

            近接戦闘が主力だが炎と風の魔法にもたけている。

「相手はオーガジェネラルだそうです」

 わたしの言葉を聞いた二人は驚愕をあらわにした。

「オーガジェネラルって国の騎士団が動くレベルの魔物じゃない⁉なんでそんなものが」

「なんにせよこれで方針が決まった。それが本当なら俺たちに勝ち目はない。悔しいがここは逃げよう」

 そういってわたしたちは走りだそうとした。

 その時、突如として目の前が壁でふさがれた。

 強大な魔物の反応に緊張していたからだろうか。『罠感知』が反応しているのに気づかなかったのかもしれない。

 だけどよく観察して気づく。

 この罠は『罠感知』をかいくぐる魔法が施されている。

 失敗した!『罠感知』に頼りすぎていた!

「くそ!やらかした!」

 シュロさんが悪態をついた。

 アルメリアさんもその横で悔しそうにしている。

 わたしも悔しい。もっと早くわたしが罠に気づけていれば。

 しばらく黙っていた。

 その間にもオーガジェネラルの反応は近くなってくる。

 それまで黙っていたシュロさんとアルメリアさんが顔を見合わせて頷き、私のほうを見た。

「カルミアはここで罠を解除する方法を探して。そして、解除することが出来たらすぐに逃げて」

 え。それはみんなでやったほうがいいんじゃ。

 だけど二人は申し訳なさそうにした後首を振った。

「カルミアも気づいていると思うがあの魔物が近づいてきている。おそらく罠の音に気づいたんだろう」

 実際オーガジェネラルの反応は最初に察知したときの半分の距離まで迫ってきている。

「わたしたちで足止めするからそのすきに逃げる方法を探して」

 二人の意図が分かった。

 オーガジェネラルを相手にたった二人で挑むこと。それは自殺行為だ。

 だけど二人はそれを覚悟したうえで言っている。

 わたしを守るために。

「そんな悲しそうな顔をしないで。さっきシュロが言っていたでしょ。先輩としてそして、一人の友人としてもカルミアに死んでほしくはないの」

 オーガジェネラルの気配がますます近くなる。

「そろそろ行かないとまずいな。じゃあな!カルミア!」

「ほかの冒険者への連絡、よろしくね!」

 そういうと二人はオーガジェネラルのいる方向へと走り始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る