第12話 休憩の合間に

 休憩のためにシュロさんたちは焚火の準備を始めた。

「こういうダンジョンでは乾燥した木とかはまずないと思ったほうがいい。だから冒険者はあらかじめ枯れ枝などの燃えやすいものを準備しておくか魔法具を持ち歩くんだ。まあ魔法でどうにかするって方法もあるから自分に合ったやり方でやるといい」

 たしかにここはまだいいけど寒いところだと体温の低下が命にかかわるからな。

 ん?そういえばそんな魔法が本に書いてあったような

「あの!わたしがやってみてもいいですか?」

「お⁉何かできるのか?」

 たしか魔法の名前は。

「『ケイラム』!」

 すると地面に小さな魔法陣が出現し、そこからちいさな炎があがった。

「これは焚火を起こす魔法ね。よく知ってるのね」

 よかったー。無事にできた。

「それじゃあわたしはこのあたりに魔物が入ってこれないように結界を張りにいってくるわね」

「おう!まかせた!」

「お気をつけて!」

 アルメリアさんは微笑みながら手を振って結界を張りに行った。

「じゃあ俺たちは食事の準備でも始めるか」

 そういうとシュロさんは腰に下げていたポーチから食べ物をいくつか取り出した。

 あきらかにポーチの大きさとあっていない量の食材。もしかしてこのポーチは魔法具なのかな。

 『知識の楽園』によるとこのポーチは予想通り魔法具の一種で限界はあるものの中にたくさんのものを入れておけるらしい。

 ものによっては中の時間が止まるものもあるみたいだけどシュロさんのは違うみたいだな。よく見れば食材も保存食とかが多いし。

「じゃあ適当に焼いてパンにはさむか。カルミアはパンを切ってくれ」

「わかりました」

 わたしは渡されたナイフでパンを切り始めた。

 作業をしているとシュロさんが「そういえば」と口を開いた。

「アルメリアのことどう思う?」

 どうって

「すごく強いし優しい人だと思いますよ」

「そうだよな。・・・ちょっと昔話をしていいか?」

 ?いいですけど。

「あいつとは幼馴染なんだ。いつもいつかいっしょに冒険に行こうって言いあっていた」

 ・・・わたしといっしょだ。

「でもあいつは天稟を授かる前から魔法がすごくうまくてな。魔法学校からわざわざスカウトが来てあいつは本格的に魔法を学ぶようになった。一方で俺には何の才能もなかった。俺の天稟が何かわかるか?『狩人』だよ」

 『狩人』の天稟の能力は『知識の楽園』によると

  ①危機察知

  ②解体

  ③命中率上昇

 戦えなくはないけど戦闘向きじゃない。

「俺は夢をあきらめるつもりだった。でもあいつは行く前に俺にこういったんだ。『向こうで待ってる』って。」

 ・・・

「俺は死ぬ気で努力した。仕事の合間に剣を毎日振って、町の冒険者に稽古をつけてもらって。技の動きを覚えるのに2年かかった。一人で魔物を倒せるようになるまでにさらに3年かかった。俺はアルメリアを探した。でもアルメリアはすでに冒険者として名を挙げていて、パーティーの誘いも多かった。そんな中俺みたいな無名の冒険者がパーティーに誘おうとしたらどうなると思う?」

 シュロさんは上を見ながら当時のことを思い出すかのように話をつづけた。

「当然周りの奴らが黙っていなかった。町の外に連れ出されてケンカを売られたよ。相手はそこそこ有名な冒険者。実力の差は明白だと思った。でも、ここで負けるわけにはいかないと思って死ぬ気で戦った。当然ぼこぼこにされ、フラフラになりはしたが最後に立っていたのは俺だった。けどさすがにそのまま町に戻る体力はなくてな、帰る途中で倒れちまった。目が覚めると俺はベットに寝ていて、目の前にはアルメリアがいた」

「・・・アルメリアさんはなんと?」

 シュロさんは苦笑して話をつづけた。

「これでもかと泣きながら怒られたよ。『なんでそんなことしたの!!』ってな。しばらく泣くアルメリアと話して、まあなんやかんやあって一緒に冒険者になるっていう夢をかなえることができた。そして今に至るってわけだ」

「なんでその話をわたしに?」

「なんとなくカルミアをみてると昔の俺が思い出されてな。つい話しちまったんだよ」

 ・・・

 そこに結界を張り終わったアルメリアさんが戻ってきた。

「ただいま。ん?なにかはなしていたの?」

「おかえり。いやちょっと昔話をな」

「なんのはなしよ」

「なんでもないよ。気にすんな」

 アルメリアさんはまだ納得がいっていないようだったがしぶしぶひきさがった。

「ま、何かあったら気軽に頼ってくれ!いつでも力になるからな」

「ありがとうございます」

 この人たちを頼って本当によかったって改めて思った。

「ちょっと!二人で納得してないでわたしにも教えてよ!」

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