第7話 わたしの決心
「『魔王討伐に行くことになった』って。冗談・・・なんだよね?」
おねがい。冗談だよっていって!
しかし、フリージアは首を横に振った。
「冗談じゃないんだ」
世界が色を失っていくような気がした。
「この前王様の使いだって人がやってきてね。最初は断ろうと思ったけど、王命だからさ。断ったらほかの人にも迷惑をかけちゃう」
「迷惑だなんて思わないよ!思うわけがない!」
わたしは自分の声が次第に大きくなっていくのを感じた。
「ありがとう。でもごめんね」
あやまらないでよ。
「いつなの?出発は」
「今日の夜には王都まで行かなくちゃ」
そんな!
「最後にこうしてカルミアと一緒に遊べて楽しかった!」
最後だなんて・・・言わないでよ。
頬を涙がつたう。
「泣かないで」
そういってほほ笑むフリージアの目も涙が流れている。
「だって、だって」
その時フリージアが抱き着いてきた。
⁉
「カルミアと友達で本当によかった!今までありがとう!だからさ・・・笑って?私は笑顔のカルミアが一番好きだよ!」
ああ、フリージアは覚悟を決めているんだ。もうわたしが行かないでって言っても止まりはしないんだな。
わたしはとどめなくあふれる涙をぬぐって、抱き返した。
「うん!もう泣かない。フリージアの門出だもん。笑顔で見送らなくちゃ!」
わたしたちは互いに顔を見合わせた。
わたしは満面の笑みでこう言った。
「がんばってね!また会おうね!」
フリージアははっとした表情を浮かべて、笑みを浮かべた。
「うん!またね!カルミア!」
わたしたちは幼いころそうしたように、笑顔で手を振って別れた。
その夜。わたしは今朝までフリージアと一緒にいた部屋で一人考え事をしていた。
魔王討伐。勇者がいるのなら簡単なことのように聞こえるかもしれないけど、実際は違う。
魔王は創世の時代から存在していて、今まで代替わりしたことは一度もない。
しかし、勇者はいままでにも何人も生まれて、何人もの勇者が魔王によって殺されてきた。
理由は『賢者』によると。
『魔王』は個としても最強の天稟であるうえに魔物の強化などができる。
一方で『勇者』は人類が手にする天稟としては最強の部類で、魔物に対する強い有効打となる能力が多くあるが、その性能はどうしても『魔王』には劣る。
そもそも魔王が歴戦の猛者であるのに対して、勇者は、もちろん素質のある人が選ばれるんだろうけど、実戦経験の点で両者の間には大きな壁があるようだ。
だからこそ、人類はパーティーで挑むことにした。けれども魔物の軍勢の前で連携を乱され、パーティーもろとも帰らぬ人となった。
はっきり言って、人類に魔王討伐は不可能だろう。それほどまでに魔王は強大すぎる。
それでも国は『勇者』が現れた時点で魔王討伐を行おうとする。何でも魔物が住む土地を国の領地にしようともくろんでいるらしい。
おまけに選ばれた人の家族には感謝として補助金が出るが、国はそれをけちるために最低限の実力者しか選ばない。
そして今回の討伐で選ばれたのはフリージアを含めたたったの6人。
ふざけないで!選ばれた人を見送る側の気持ちを考えたことはないの⁉
勇者の実力がどれほどのものかはわからない。けど、今回の勇者が今までの勇者をはるかに超える力を持っているなんてことはないだろう。
わたしもできることならフリージアを助けに行きたい。でも、わたしの実力じゃ助けるどころか足手まといになるだけだろう。
でも!!このまま危険な戦いに行くフリージアにただ村の中でその身の安全を願うだけだなんていやだ!!
わたしも強くならなくちゃ!フリージアを守るために!
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