第5話 初めて魔法、使えました
お店が閉店するころに約束通りあの冒険者の二人がお店にやってきた。
「よ!来たぜ!店長さん!」
「まだ早かったですか?」
「いえいえ、大丈夫ですよ。ちょうど今終わったところです。それから、わたしのことはカルミアでいいですよ」
店長さんってなんだか距離を感じるからね。
「わかりました。そういえば自己紹介がまだでしたね。わたしはアルメリア、このパーティーの後衛をやっています。よろしくね」
「オレはシュロ。このパーティーの前衛で、リーダーをやってる。よろしくな」
「よろしくお願いします」
「よし、じゃあ行くか!」
わたしは二人に連れられて村の外にやってきた。
「そういえばカルミアはどんな戦い方がしたいんだ?」
前に本で読んだけど、戦い方によって使う魔法には違いが生じるらしい。
そもそも魔法は主に攻撃魔法、回復魔法、防御魔法、支援魔法の四つに分けられる。
もちろん例外もあるけど、一般的に冒険者は自分の戦い方に合わせてこれらの魔法を使い分けて戦うらしい。
わたしは『魔導士』で魔法の威力が強化されるし、武器を使いこなすのは難しいからな~。
「魔法主体で戦えたらいいなって思ってます」
「それならわたしが教えたほうがよさそうね」
「そうだな。オレは自分を強化することはできるが、アルメリアみたいにいろいろな魔法を使いこなすことはできないからな~」
「よろしくお願いします!アルメリアさん!」
「じゃあまずは簡単な炎を出す魔法からいきましょうか。わたしのことをよく見てね」
アルメリアさんは少し離れたところに移動した。
「まずは集中して体の魔力を感じるの」
わたしは言われた通り自分の魔力に意識を向けた。
たしかになにか自分の中にあるのを感じる。
「魔力を感じれたら、あとは使いたい魔法をイメージしながら詠唱をして魔力を解き放つだけ。見てて」
アルメリアさんは詠唱を始めた。
かざす手に小さな魔法陣が現れる。
そして魔力を解き放つ。
「『イングショット』!」
魔法陣から小さな火の玉が飛び出し、その先にあった岩にぶつかって消滅した。
「これが魔法。やってみて」
どうだろう。できるかな。
わたしはアルメリアさんと同じように魔力を感じながら詠唱をした。
それと同時に魔法陣が形成される。
あれ?なんかおっきくない?
「いきます!『イングショット』!」
ドカーン
大きな音とともに小さな子供くらいの大きさの炎の球が飛び出し、岩にひびを入れた。
え?なにこれ?
あ!『魔導士』の『魔法効果上昇』の効果か。
てことは。
わたしは詠唱なしで同じ魔法陣を5つ出現させ、さっきと同じ炎の球を5つ放った。
さっきとはくらべものにならないくらいの大きな音とともに、岩を粉々に破壊した。
本当にできた!『詠唱破棄』と『多重詠唱』の合わせ技。
「できました!」
あれ?二人ともポカーンとしている。
「い、いや。ま、まあ、そうだな。うん、できたな。よかったよかった。な、アルメリア?」
「え、ええ。うん、すごいよ!あの魔法はただの小さな火の玉を出す魔法なのに」
あ、これあれだ。やりすぎちゃったやつだ。
あははは
「そうだな。まだ魔物と直接戦ったわけじゃないけど、十分冒険者としてやっていけると思うぞ」
「本当ですか!」
「本当よ。魔法だけで見たらわたしもうかうかしてられないくらいよ」
そこまでいってもらえると嬉しいな。
というか。
「何やったのかは聞かないんですか?」
「冒険者は依頼によっては競争相手になったりもするからな。相手の手札は聞かないっていう暗黙の了解があるんだ」
へーそんなのがあるんだ。今後冒険者の人に何か聞くことがあったら気を付けよう。
「じゃあ村に戻るか」
「はい!今日はありがとうございました!」
「気にしないで!値引きしてもらったんだもの。その分ちゃんとはたらくわ」
いいひとたちでよかった。
わたしたちは夕日に照らされた村に戻って、お店の前で別れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます