第4話 魔法、教えてください!
開店してしばらくするとドアベルがなってお客さんが入ってきた。
男女の二人組。服装的に冒険者の人かな?
男の人は皮鎧を着ていて、背中に大きな剣を背負っている。
女の人は白色のローブを着ていて、手には先端に宝石が付いた杖を持っている。
「いらっしゃいませ!何かお探しの本がありましたらお気軽にお聞きください!」
「あ!それなら聞きたいんだけど、この周辺に生息する魔物に関する本ってあるかしら」
「それでしたらこちらのほうにあります」
二人は「ありがとう」といってわたしが示したほうに行った。
せっかくだしこの人たちに聞いてみようかな。
「あのーすみません。お二人は冒険者の方なんですか?」
二人は「そうだけど」といった。
「お願いがありまして。わたしに魔法を教えてくれませんか?」
『賢者』でどうやったらいいかはわかるんだけど、実際に使っているのを見ないとよくわからないことも多いからね。
女の人は少し考えた後「いいわよ」といった。
やった!
しかし男の人は「じゃあさ」と切り出した。
「教える代わりにこの本値引きしてくんない?」
そうきたか。
女の人は「ちょっと!」って言ってるけど、わたしのほうからお願いしている分むこうもお願いするのはおかしな話じゃないんだよなぁ。
仕方ない。
「いいですよ」
「まじで!よっしゃー!」
「いいんですか⁉お店の売り上げが下がっちゃうんじゃ」
まあ、たしかに値引きした分の売り上げは下がっちゃうんだけどね。
「大丈夫ですよ。わたしのほうからお願いしているんですから」
「そう?じゃあお言葉に甘えて。ありがとうね」
こうしてわたしは魔法を教えてもらうことになった。
「それで?いつごろに教えに来ればいいんだ?」
そうだなー。
「じゃあお店が閉まった後とかでもいいですか?」
「いいぜ!いいよな?」
女の人も「いいですよ」といった。
男の人が仕切っている感じだけど、このパーティーのリーダーなのかな?
「それじゃあお願いします。はい!こちらがお買い上げの商品です!」
わたしは二人が買った本を差し出した。
二人は本を受け取ると「また後で」といって店を出ていった。
二人と入れ違いでフリージアが店の中に入ってきた。
「やっほー。さっきの人たちお客さん?」
「そうだよ。冒険者らしいけど知ってる?」
フリージアは少し考えた。
「あ!思い出した!昨日ギルドであった人だ!このあたりに来たのが初めてみたいで魔物の分布とかを知りたがっていたからこの店のことを教えたんだ」
なるほど。あの二人はフリージアの紹介だったんだ。
「それで?何か買いたい本があるの?」
「実は今からダンジョンに行くんだけど、トラップが多いみたいだから罠に関する本とかないかなって」
なるほどね。
ダンジョンはいつの間にかできていつの間にか消えるいまだ解明されていない不思議な存在だ。
学者の中にはダンジョンは魔王に関係しているんじゃないのかという人もいるくらい。
内部の構造は一つ一つ異なっていて、共通しているのは何層かの部屋に分かれており、お宝が眠っていることもあるということ。そして、内部には魔物が生息しているということ。これもダンジョンが魔王に関連しているんじゃないのかと言われている理由の一つ。
そんなわけでダンジョンが出現したら冒険者や国の調査団が調べに行くんだよね。
命がけだけど、中で手に入れたものはすべて自分のものにできるということで冒険者の間では結構おいしい話として話題になっているらしい。
「というか、わたしが言うのもなんだけどトラップを探知する魔法具を買ったほうが確実なんじゃない?」
「いやー、その、まだ冒険者になったばかりだからお金がね」
あ、そういうこと。たしかに魔法具は基本高いからなあ。
それならわたしの鑑定機はどうなんだという話だけど。これは商業を始める人に村が提供してくれるもの。
小さな村だからね。人口を減らさないために村が頑張っているらしい。
「罠に関する本ならこっちだよ」
わたしはフリージアを探している本があるところに案内した。
「これなんてどう?『ダンジョン攻略法④罠について』。これなら持ち運びやすいし、ほかのものよりも安いよ」
「じゃあそれにしようかな」
わたしは早速会計をして、本をフリージアに手渡した。
あ!そうだ!
「ちょっと待ってて!」
わたしは急いで二階の居住スペースに向かい、あるものをとってまた降りた。
「はいこれ!」
わたしがフリージアに差し出したのは回復薬。仕入れの時に開店祝いとしてもらったものだ。
「いいの?」
「気にしないで!たくさんあるから」
仕入れ先の人が気さくな人でたくさんもらったんだよね。
「ありがとう!大事にするね」
いや、使ってよ。
「気を付けてね」
「もちろん!いってきます!」
「いってらっしゃい!」
フリージアは意気揚々と出ていった。
さて、わたしもお店が終わったら魔法を教えてもらわなきゃ。
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