第2話 開店します!
ここはベリル村の一角にある小さな家。
わたしはここに自分の本屋さんを構えることにした。
というのもわたしの天稟『本好き』は
①製本:本を作成することができる
②写本:本を複製できる
③読書:あらゆる本を読み内容を理解することができる
④書庫:本を無限に収納できる
という能力であり、これを生かすとしたら本屋さんで働くのはどうだろうかと思ったわけだ。
それに自分のお店ってなんだかワクワクするし。
お店自体は昔から親切にしてくれた村の人たちが格安で貸してくれて(本当にありがたい)、商品は手持ちのお金で何冊か購入した。ここは冒険者もよく訪れる村だから、周辺の魔物の生態に関する本などが特によく売れると思う。
わたしはさいごの本を棚に並べ終わった。
これで準備完了!
わたしは表のプレートの『close』を『open』に変えた。
『本屋ローレル』、いよいよ開店です!
開店と同時にカランカランとドアベルが鳴った。
「いらっしゃいま・・・ってフリージアじゃん!どうしたの!」
「どうしたもこうしたもないよ!カルミアのお店の開店だよ!一番に来ないわけがないでしょ!で、どう?順調?」
『順調?』ってフリージアが最初のお客だからまだ順調も何もないよ。
「これからだよ。フリージアは?冒険者、うまくやれてる?」
「順調順調、今日もいくつか依頼をこなしてきたんだ!」
そう、フリージアはあの時の宣言通り冒険者になった。
『魔剣士』の天稟持ちの冒険者のうわさはすぐに広まった。
パーティーへの誘いが多くて困っているという。
「そういえば、騎士団への誘いを断ったって本当なの?」
「ほんとだよ」
何か理由があるのかな。剣を学ぶ村の子たちの多くは騎士団を夢見ているのに。
「冒険者のほうが気楽そうだからね。ほら、騎士団って窮屈そうじゃん」
そういわれてみれば確かに騎士団はあまりのびのびとできるイメージがないなぁ。
「じゃ!これからまた依頼があるから。またね!頑張って!私もほかの冒険者たちにこの店のこと紹介するから!」
「ありがとう!またね!」
あっという間に来てあっという間に去っていった。
ほんと、昔から元気が有り余っているんだから。
そのあとはお世話になった村の人たちが次々と来店してきてくれて、なかには何冊か買って行ってくれた人もいた。
やったー初の売り上げだー。
夕方に差し掛かろうという頃にわたしの母親がフリージアの母親と一緒に来店した。
「やあ、きたよ!カルミア!」
「ママ!それにポプラさんも!」
「こんにちは、カルミアちゃん。さっきそこでばったりあったから一緒に来たのよ」
あれ?パパは?
「あの人なら『あったら確実に泣いてしまう』っていうからあえていかないみたいよ」
パパ・・・。一人暮らしするって言った時もすごく泣いていたもんな。
「でもほんとにカルミアちゃんはしっかりした子よねぇ。ウチのフリージアももう少ししっかりしてくれたらいいのに」
いえいえ、そんなことはないですよ。
「小さいころ、弱いのに喧嘩っ早いフリージアをいつも守ってくれてたわよね」
そういえばそんなこともあったな。あの後だっけフリージアが急に剣の練習を始めたのは。
ほかにもいろいろと話した後、二人は家に帰っていった。
なつかしいな。あの頃のフリージアはわたしよりも弱かったな。『いつか一緒に冒険者になって世界中を旅しよう』って約束して・・・あ、そうか。だからあの時フリージアは悲しそうな顔をしていたのか。なんで、忘れていたんだろう。
でも、今のわたしはフリージアの足を引っ張るだけだろうし。
日が沈み始め、あたりが一層暗くなってきた。
わたしが店を閉めようとしたとき。
「本を買い取ってくれないか。いくらでもいい」
急にやってきた古ぼけた服のおじいさんにそう言われた。
「買取ですか?少々お待ちください」
わたしは店の奥から鑑定機を持ってきた。
鑑定機はその名の通り鑑定の魔法が施された魔法具だ。
「売りたい本を見せてください」
おじいさんが取り出したのは煤にまみれた一冊の本だった。
早速鑑定機を使って調べてみる。
これは。
「誠に申し訳ありませんが、こちらは魔導書です。魔導書は買い取ることができません」
魔導書は聖書とも呼ばれ、適性のある人には新しい天稟を与えるが、適性のない人には白紙に見えるのだ。
そのため魔導書は非常に貴重だが買い手がつかないガラクタと商人の間では言われているらしい。
要するに売れないのだ。
わたしの店の場合はそもそも買取を行わない。面倒ごとになるのは嫌だからね。
しかしおじいさんは食い下がらない。
「それならもらってくれ。身辺整理をしていたら出てきたんじゃが、わしが持っていても仕方がないからの」
結局、そのまま押し切られて受けとってしまった。とはいえさすがに無料というわけにはいかないから、いくらか払って買い取ったけど。
いったいこれどうしよう。。
わたしはなんとなくページをぺらぺらとめくってみた。
そこでわたしは思わず目を疑った。
え?・・・読める。
わたしに適性がある?いや、それはないだろう。
もしかして・・・『本好き』って魔導書も対象なの・・・かな?
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