天稟『本好き』の本屋さん

月夜アカツキ

第1話 なんなの⁉この天稟⁉

 この国ではその年で16歳になる人は王宮の広間で天稟授与式が行われる。

 そしてこの式の後からは大人としてみなされ、それぞれが仕事を見つけ働くことになる。

 天稟とは言ってしまえば神から授かる才能のようなもの。もちろん一部を除いて天稟が職業などを左右することはない。だけど、例えば同じ魔法使いでも魔法に関する天稟があるのとないのとでは成長速度などに大きな違いが生まれる。

 だから、大体の人が自分の天稟にあった職業に就くんだよね。

 そして今日、わたし、カルミアは幼馴染のフリージアと一緒にその式に参加するために王宮に来ていた。

「つぎ!ベリル村出身、フリージア!前へ」

「はい!」

 国王に呼ばれたフリージアが前に進み出た。

 天稟授与式と言っても前にある水晶に手をかざしたらそこに浮かび上がるだけの簡単なものだ。

 フリージアが手をかざすと、水晶は輝き始めた。

「フリージア、天稟『魔剣士』!」

 周りにおお!という歓声が広がる。

 魔剣士って言ったらかなり珍しい天稟じゃない!

「すごいね!フリージア!」

 わたしは戻ってくるフリージアにそう声をかけた。

「ありがとう!次はカルミアの番だね、いってらっしゃい!」

「つぎ!同じくベリル村出身、カルミア!前へ」

 フリージアに見送られながらわたしも前に進み出た。

 うー、さっきのフリージアのこともあってか周りの視線がすごいよ。

「カルミア、ここに手を」

 大臣っぽい人に言われるがままにわたしは水晶に手をかざした。

 フリージアの時と同じように水晶が輝き始めた。

「こ、これは!」

 結果を見た大臣が驚いている。

 いったい何が浮かび上がったんだろう。『魔導士』とか?

 わたしは水晶に顔を向けた。

 そこに浮かんでいたのは。

「『本好き』?え?なにこれ?」

「え、え~~。ごほんっ!カルミア、天稟『本好き』!」

 周りにどよめきが広がる。

 王様も大臣も困惑しているけど、一番困惑しているのはわたしだよ!

 なに⁉『本好き』って⁉

 いやたしかに本は好きだけどね。それを神様から才能として授かるだなんて。

 周りの反応的に珍しいものなんだろうけどもっと何かあったでしょう。

 わたしはとぼとぼと元居た場所に戻る。

 ああ、周りの奇異の目線がいたい。

「おかえり、カルミア。だいぶ変わった天稟をさずがったね」

「ほんとだよ~。わたしもフリージアみたいにすごいのが来たらよかったのにな~」

「でも全然知られていないってことは、いろいろな可能性があるってことかもよ?」

 フリージアはいつも前向きだな。

 でもそうだね、どんな才能も使い方次第だよね!

「ありがとう!ちょっとは元気になったよ!」

「そう?よかった。ところでさ、仕事どうする?」

 仕事かー。そうだよね、探さないとだよねー。

 人によっては式の前から決まっている人もいるみたいだけど、わたしたちはそうではない。

「もしよかったらだけどか、いっしょに冒険者にならない?」

 冒険者?それって魔物と戦ったりするあの冒険者?

「ごめん。フリージアはもともと剣の練習とかしていたし、『魔剣士』の天稟を授かったからすごく強い冒険者になれると思う。でもわたしは違うからさ。足手まといになるだけだよ。だから遠慮しておくね。わたしはお店でもやろうかな」

「そんなこと!・・・いや、なんでもない。そうだね無理いってごめん」

「ううん、気にしないで。頑張ってね!」

「うん!ありがとう!」

 ちょっと悲しそうなのは気のせいかな。

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