第8話 追放された勇者
「ごめんください……」
「どうした塩らしくして」
すぐに勇者がやってきた。
だが様子がいつもと違う、あれだけうるさい勇者が元気がないようだ。
「追放されました」
「は?」
「追放されました!」
何を言ってるんだ? 意味がわからない。
「街から追放されたんですよ! 盗みすぎて!」
なるほど。
「勇者を追放ですよ? ありえなくないですか? 誰のためにこんな盗みまでしたと思ってるんですかね!」
前言撤回、いつものうるさい勇者だ。
「いや、そりゃ盗みをすれば罰があるだろう。牢獄にぶち込まれなかっただけマシじゃないか」
前のコイツは中々の邪悪だったぞ。
「勇者だからぶち込まれなかったんですよ、その時間があれば魔王倒してこいってね! 正直もう牢獄でいいんですよ! そしてシャバに出たら勇者やめてスローライフ送りたいんですよ!」
思い切り叫びたず勇者。
やけになっているようだ。
「なぜだ?」
「あなたに勝てないからに決まってるじゃないですか!」
「そう言われても困るが」
「てか追放されたらどこ行けばいいんですか!? このダンジョンクリアしないと他にいけないですよ!」
「確かに、路頭に迷ったな勇者よ」
「笑い事じゃないんですよこちとらもう明日がないんですわ! とりあえず通してくださいよ! 次の町にいけばなんとかなるかもしれないんで!」
すごい地団駄を踏んでいる。
これが誇り高き勇者の姿なのだろうか、いやもう随分前から違うか。
「それはならん、ここを守るのが俺の仕事だ」
「ケチ! ドケチ! このまま死んでも良いんですか! 後悔しますよ? あの時通しとけばこんなことには、って!」
「死ぬ分には全然構わんが、お前死なないだろう。殺しても死なないだろ、死ぬならもうとっくに死んでおるわ」
あの棺のせいで何回殺しても復活してくる。
そのせいで俺は今日もこんなところにいるのだ。
「ムムムムム……」
俺の鋭いツッコミにぐうの音も出ないようだな。
「じゃあ俺はどうすれば……」
「死んで復活してを繰り返しとけばいいんじゃないか?」
野宿で襲われてもある意味無敵だろう。
「嫌ですよ! そんなの生き地獄じゃないですか!」
「ではどうする、行き場所もないのだろう?」
「そうだ、通せとは言わないからここに住まわせて――」
「嫌だな」
勇者うんぬんの前にこんなうるさいのと一緒にいれるはずがないだろ。
「グギギギギ……キエェェェ!!!!」
「うわ、キモッ! ――あっ」
何かが切れたような奇声をあげて飛びかかってきたからつい手が出てしまった。
「ヌギョ!? ……絶……えて……」
目をひん剥いて倒れる勇者の遺体が運び出される。
「追放されたらあの棺はどこにいくのだろうか……」
その背中? を見ながらふと疑問に思った。
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