第6話 ◯◯に飽きた勇者
「飽きました……」
またしばらく日が経ち勇者が現れた。
格好は……よし、前の最強装備とやらだな。
「何がだ」
えらく疲れた様子で訴える勇者に聞くだけ聞いてやる。
コイツは言わないと気が済まないタイプということはもうよくわかっているのだ。
「スライム狩り飽きましたよ! なんで街の周りはスライムしか出ないんですか!」
おぉやはりクレームを言い出すと元気になるな、嫌な奴が勇者になったものだ。
「もう何千、いや何万の域ですよ? もうワンパンです、なんの面白味もありません! しかも経験値殆どもらえないし、拷問ですかこれは!?」
なるほど確かにスライム如きではなかなかレベルもあがらんだろう。
「ならこのダンジョンでバットを狩れば良いではないか」
「めんどくさいんですよ! ここまでくるのが! 時間かかるし、こんな暗い場所で野宿とかしたくないんですよ!」
相変わらず注文が多いやつだ。
「というか、あなたのせいですよね!?」
「何故俺のせいになる」
「あなたがここを通してくれないから倒すまでずっとスライムしか狩れないんですよ!」
まあ確かにそうなんだが、そうは言っても仕方がないだろう。
弱い勇者が悪いで終わりだ。
「あなたがここにいるのがまずおかしいんですよ? わかってます? 普通最初は弱い魔物を配置するんです! スライム、バットときてあなたはおかしいんです!」
「それは魔王に言ってくれ」
俺に言われても困る、ちゃんと進言したし。
「こちとら、あなたを倒さないと言えないんですよ!」
それもそうだ、ボケていたわ。
「で、あなたはもうそろそろ負けてくれないんですか?」
「俺の仕事はここで勇者を倒すことだ、負けるわけにはいかぬ」
「いや、わざとでいいから一回負けてくださいよ! もうそろそろ街の人の目が怖いんですよ!」
地団駄を踏む勇者だが、そういっても負けることはできない。
「あいつまだここにいるとか、早く旅に出ろよとか、パレードしたのに何だったんだとか……確かにそうですよ! もう何ヶ月ですか!? そりゃ不満でますよ、自分でも言ってますよ!」
確かに想像したら少し可哀想な光景だ。
「でも旅にはでてるんですよ! えぇ、しっかり、このダンジョンまでの旅にね! 日帰り旅行ですよ!」
やめてくれ、これ以上は本当に哀れだ。
「わかりましたか? わかりましたよね!? じゃあ一回退きましょうかそこ!」
どけどけと言うジェスチャーの圧に押されて横に移動してしまう。
そこを勇者が何食わぬ顔で通り過ぎ、ダンジョンを抜け――。
「さすわけにはいかんな」
「――オホェ!?」
後ろから奴の腹部を抉る。
危ない危ない、危うく戦わずして道を譲るところだった。
まあ今回も無事撃退、可哀想だがそんな目で見られたくないならもっとレベルを上げてきてほしい。
――スライムで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます