第14話
二日が経った。
叔父の具同の入院はまだ続いている。
仕事の都合から見舞いには行けなくて、神楽は具同とラインでやり取りをしている。
先日、厚木莉久を知るために、同じ警察官であり大学の同級生でもある瀬谷の元カノに会った旨を知らせると、即座に返信が来た。
ラインを送ったのは、電車から降りる寸前だったから、返信が来たと確認しただけで読まなかった。
ふたたびラインを開いたのは、昼休憩も取らず書類仕事を終えて、コーヒーを飲みに廊下にある自動販売機の前に立ったときだ。
缶コーヒーを口に運びながら、具同のラインを開くと、
なにやってんの!と、アニメのキャラが怒っているスタンプが目に飛び込んできた。
続いて、具同の返信が続く。
――あんた、ほんとに刑事? 今、あんたがやらなきゃならないのは、津村さくらとコンタクトを取ることでしょ! 今なら、津村さくらの居所がわかるんじゃないの?
――その通りかも……。
と、コーヒーを飲むのも忘れて返信する。
――その瀬谷とかいう男の元カノに会ってみたいからって、回り道してんじゃないよ!
――そうじゃないです。そもそも、瀬谷の元カノに会おうと思ったのは、叔父さんが津村さくらの犠牲者同士のつながりを探ってみろと言ったからで。それに、別に瀬谷の元カノなんか興味ありませんから。
返信しながら、
あれ? そうなのかな?
と、一瞬でも思ってしまった自分が情けなかった。元カノの恵といい具同といい、誤解している。心の底から、瀬谷には男を感じた覚えはない。
だが、それなら、なぜいちばんはじめに瀬谷の元カノに会おうとしたんだろう?
そう。
すぐにでも津村さくらを追うべきなのに。
――津村さくらに会いに行って!
――わかりました。
神楽は慌てて返信し、静岡県警にいる同期の顔を思い浮かべた。
誰も浮かばなかったが、同期の
津村さくらに直接会うのだ。
もちろん、津村さくらがまだ同じ場所に住んでいればの話だが。
警察官になってつくづく思うのは、組織内の人間関係の大切さだ。何かと秘密主義の組織で、横のつながり縦のつながりは重要だ。
人間関係を大切にしていると、ふとしたところから情報が入る。そのおかげで、今まで何度も助けられてきた。
組織内の伝手で、津村さくらの住所はすぐにわかった。厚木莉久は事故で亡くなったのであり容疑者が存在するわけではない。お見舞いの手紙を送りたいという理由で、ツアー客の住所はすんなりと教えてもらえた。
神奈川県横浜市の鶴見区方南町6-122。
津村さくらの住所だ。
今度は神奈川の鶴見ですか。
住所を目にして思わず神楽は呟いた。茨城、千葉、都内江東区。
ずいぶんいろんな場所へ転居するものだ。
手帳に鶴見の住所をメモ書きし終えて、神楽は飲みかけのコーヒーを一気に喉へ流し込んだ。
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