23日目


 ドラゴンの祠に到着した。

 洞穴の入り口には捧げものの彫刻を並べた祭壇が建っていた。


"よく来た"


 白いドラゴンは私たちの頭に思念を送ってくる。

 私は剣の柄に手をかける。


「故あって宝石を頂戴したい」


 状況次第では戦うつもりだった。


"かまわぬ。持っていけ"


「そうか、なぜ?」


"速き亜竜を倒すのであろう。あれには我も困っていた"


 『速き亜竜』とはヴィーヴルの別名だ。

 ドラゴンの中には魔法を使い、人の心を読むものまでいると本で読んだことがある。


「少し多めに貰いましょう」


"バレているぞ"


 袋を広げたラーナに竜が思念波を送った。


 ドラゴン信仰を持つアテンの街は、かつて魔物の街と呼ばれたこともあった。

 魔物の竜種との区別がつけられてからはその声も小さくはなったが、古い考えの人々はいまだ存在する。

 このドラゴンにも民を想う気持ちがあるのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る